平地無風の条件下で、ロードバイクに乗って時速30km以上で1時間走り続ける。これって簡単そうでなかなかできないんです・・。あるデータによると、このアベレージで走れるのはサイクリストの5%程度との事です。
しかし、レース志向の人と一緒に走るには、時速30kmの壁は超えておきたいですね。基本トレーニングすれば筋力や心肺機能が強化されて速くはなりますが、その前に効率的なペダリングを習得してみてはどうでしょうか。そこで今回は、筋力や心肺機能の強化ではなく、乗り方を意識する事で速く走れるようになる方法をまとめます。
ポイントは重心位置
ロードバイクで速く走るには、優れた心肺機能と強い筋力、そして上手な重心の使い方(ペダリングスキル)が重要です。その中で、重心の使い方はすぐにでも実践できて効果を実感できる要素です。
ロードバイクと乗り手の接点は、ハンドル、サドル、ペダルの3点しかありません。そして、ハンドルとサドルへの体重のかかり方が適正でないと、ペダルにしっかり体重を乗せることができずに楽に速く走れなくなります。
つまり、ハンドルとサドル、ペダルにかかる重心の配分(重心位置)が適正でないと、体重をうまく利用できず脚の筋肉を無駄に使うペダリングになってしまうので、長時間大きなパワーを出せなくなってしまうのです。
ぺダルに体重を乗せる
とはいえ、自分の適正な重心位置を見極めて、ペダルにしっかり体重を乗せる感覚をマスターするのは難しいです。そこで、実際にロードバイクに乗ってサドル荷重とハンドル荷重を意識した上で適正な重心を考えてみましょう。
サドルのみに体重を乗せてみる
まずは、ハンドルやペダルには体重をかけずにサドルだけに重心をかけるようどっかりと座ってペダリングしてみてください。ペダルに体重がかからず太もも裏の筋肉をたくさん使わなければ進まないので、大きなパワーを出すのが難しいです。固定ローラーを持っている人は、上半身を起こして手放しでやってみるとより実感できます。
ハンドルのみに体重を乗せてみる
次に前がかかりでハンドルに最大限荷重をかけて走ってみましょう。今度は太もも前の筋肉に頼るペダリングになるはずです。これでは短時間ならパワーを発揮しますが、長時間は続きません。
ペダリングに体重を最大限使う
最後にハンドルには軽く手を添えるだけで体重をかけず、胴回りの筋肉で上半身を支えて最大限ペダルに体重がかかるように意識してみましょう。体重に加えて、脚の筋肉もバランスよく使えるので大きなパワーを楽に出せる上、長時間の持続もしやすいです。
重心を考えたセッティング
重心位置を適正にするには、フォームが大事ですがバイクセッティングも重要です。サドルの高さと前後位置を適正にするため、クランクアームが地面と水平になる位置で、ヒザ皿の裏側とペダル軸が垂直線上にくるように合わせましょう。
ちなみに自分は、何かにつかまりながら糸に結んだ5円玉を垂らしてポジションを調整しています。上から見るとちょっとわかりにくいので、友達に横から確認してもらうとより確実です。また、測定するときには、「クランクアームは地面と水平になっているか?」「カカトが上がったり下がったりしていないか?」に注意です。
サドルの位置を適正なニュートラルの位置に合わせると、ペダルにしっかり体重を乗せることができ、太もも裏の筋肉をメインにバランスよく脚を使えるので、高い出力を長時間持続しやすいです。
また、サドルを前目の位置に合わせる「前乗り」では、太もも前側の筋肉をメインに使うため大きな力を出しやすいですが、長時間持続できません。TT(タイムトライアル)など、短時間を高速で走る自転車競技は前乗りのポジションに合わせます。
サドルを後ろに下げた「後ろ乗り」は、お尻や太もも裏の筋肉を使いやすいので、一見ペダリングが上手くいくように感じますが、体重を使いにくいので筋力に頼った走りになりがちです。
体重を使ったフォームに改善
適正な重心位置で、体重を最大限使ったペダリングをするには、胴回りの体幹で上半身を支えながら、ハンドルには体重をかけないのが理想です。体幹の力がある程度ないと理想的なペダリングは難しいかもしれません。
フォームをチェックするには、固定ローラーを持っている人であれば、ロードバイクのサドルに普通に座って上半身を真っ直ぐ起こした状態から上半身を徐々に倒します。そして腕の支えなしでは倒れそうな位置をキープしてペダリングすると、ペダルにしっかり体重が乗るだけでなく、ペダルを踏みこむ力の反作用で上半身を支えられます。
このトレーニングをする事で、ハンドルとサドルに体重をかけすぎない理想的な重心位置がつかみやすいです。そして、その位置こそ、体重を最大限使ったペダリングをできる位置なのです。
固定ローラーを持っていない人は、実走で手のハンドル荷重をゼロにするよう意識しながら走ってみてください。(関連記事:固定式ローラー台のおすすめ 9選!)
上りでの重心移動
坂道の上りでは勾配によってロードバイクが傾くので、重心位置が変わります。前輪が上を向く角度になるので重心は後ろになります。そこで、上りでは乗り方を変えて重心をずらす必要があります。
上りで体重を使ったペダリングをするには、重力に対してクランクが90°になる位置で体重をペダルに乗せられるよう、勾配に応じてサドルに乗る位置を前に移動させればいいのです。「勾配がきつくなればなるほど、腰を前に移動する!」これを覚えて実践しましょう。
体重を使った休むダンシング
キツい上りでは息が上がり、体力と脚を徐々に削られます。そこで、「休むダンシング」で休憩しながら登れば楽です。休むダンシングでは、体重を最大限に使って脚と呼吸を休めながら走ります。
コツは体の力を抜いて、踏み込むペダルに体重をがっつり乗せる事を意識する事です。また、腰の位置がペダルの真上に来るようにするのも大事です。ただ、腰の前後位置は勾配によって変わりますし、ちゃんと乗れているか客観的に把握するのは難しいです。友達と一緒に走って横から見てもらうといいかもしれませんね。
そして、ペダルに体重が乗る時間を長くするのも効果的です。なるべく上死点の近くから体重を乗せ始めて、クランクが3時~4時では膝が伸び切っているくらいが理想です。ただし、下死点まで踏み切らないように、左右の切り替えを早くしてリズミカルに繰り返すだけです。イメージ的には、水に浮いている複数の木の板を走る感じです。踏み込んだ板が沈む前に次の板に飛び移る感覚です。
休むダンシングの筋肉の使い方をマスターするには、階段で簡単にトレーニングできます。上るときに上の段にある膝を伸ばすのではなく、上半身を前傾させて股関節を伸ばしながら上ると、太もも前側の筋肉をほとんど使わず上れます。これは、休むダンシングの筋肉の使い方とほぼ同じです。
まとめ
- 楽に長時間30km/hで走るには重心位置が大事
- 体重はハンドルやサドルではなく、ペダルに乗せるようにする
- 重心位置を合わせるにはバイクセッティングも重要
- 固定ローラーを使った前傾姿勢でフォームを習得する
- 上りではサドルの前に座り重心を移動する
- 上りでは休むダンシングを使おう