2017年シーズンにロードレース世界トップカテゴリー「UCIワールドツアー」に所属する全18チームの特徴と移籍した選手、注目選手、使用するロードバイクなどをまとめます。チームや選手を簡単に理解しておくと、ロードレース観戦もグッと面白くなりますよね。 スカパー!に登録して「J SPORTS」でロードレース観戦!
ただ、チーム数が多いので6チームずつ3回に分けてまとめていきたいと思います。今回は「AG2R」「アスタナ」「バーレーン・メリダ」「BMC」「ボーラ・ハンスグローエ」「キャノンデール・ドラパック」の6チームです。
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【目次】
AG2R LA MONDIALE/アージェードゥーゼル・ラ・モンディアル
入れ替わりが激しいロードレースチームにあって、長い歴史があるフランスのチームです。ツール・ド・フランス(以下ツール)などグランツールを始めとしたステージレースを得意としています。
他のチームからお金をかけて選手を引き抜くようなことはせず、地元フランスの選手を中心にじっくり生え抜きの選手を育てるやり方は好感が持てます。
2011年ジロ・デ・イタリア(以下ジロ)総合3位、2014年ツール総合2位、昨年は注目の若手「ロマン・バルデ」がツール総合2位という快挙を成し遂げましたが、まだ優勝がありません。今年はグランツールを制覇できるのか期待です!
もちろん今年のツールでエースを張るのは昨季ツール2位の「バルデ」、ジロのエースは「ポッツォヴィーヴォ」です。その2人をアシストするのは経験豊富で昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ(以下ブエルタ)で初の区間優勝を果たした「マティアス・フランク」となってます。その他にも生え抜きの有望な若手フランス人選手が数多くいるので活躍が楽しみですね。
AG2Rを支えるマシンは「FACTOR/ファクター」というフレームブランドにシマノ製コンポ、ホイールはマヴィックです。正直、フレームブランドのファクターは初めて聞く名前でした。
ファクターは2007年に誕生した新興ブランドで、レーシングカーや航空宇宙産業の技術をバックボーンに持っているようです。軽量オールラウンダータイプの「O2」は740gというフレーム単体重量と、ヘッド&フォークのつなぎ目も独特で空力性能を考えて作られています。
ASTANA PRO TEAM/アスタナ プロチーム
元名選手のヴィノクロフ大佐を指揮官に、常に優勝を狙える選手層の厚さを誇るカザフスタン国営企業のチームです。昨年までは豊富な資金力を背景に大物選手を獲得していましたが、今年はおとなしいですね。どちらかといえばワンデーレースが得意な選手を数人獲得しています。
今年のグランツールは、年齢のため衰えがきていた大エース「ヴィンチェンツォ・ニーバリ」を「バーレーン・メリダ」に放出し「ファビオ・アル」をエースに据えて戦います。
感情的で攻撃的な熱い走りをニーバリ先輩から受け継いだ「ファビオ・アル」には注目です。まだ若いですが2015年ブエルタの覇者であり、実力的には今年もグランツール総合優勝してもおかしくないですね。
やや年齢を重ねていますが「アル」を固めるアシストの「ルイスレオン・サンチェス」と「ヤコブ・フグルサング」は強烈です。時にはアシストに徹しながらも総合上位に食い込んでくる実力者です。
昨年、ニーバリがジロで劇的な総合優勝を飾ったのも2人のアシストが素晴らしかったからです。今年もエースの「アル」をしっかりアシストしてくるでしょう。
昨年はS-WORKSでしたが、今年はアルゴン18のフレームを使います。軽量オールラウンダーのフレーム「ガリウムプロ」に、コンポはシマノが装備されています。ただ、クランクとブレーキはFSA、ホイールはヴィジョンとなっています。
BAHRAIN-MERIDA/バーレーン・メリダ
バーレーンの銀行など複数の大企業がスポンサーを務める新しいチームです。取りまとめたのはバーレーンの王子だとか・・。選手の国籍はバラバラでアジア圏の選手も3人おり、全部の国籍が11にもなる多国籍チームです。昨年のジロを制した「ニーバリ」が加わり、今年はジロ優勝が最大のターゲットとなりそうです。
ニーバリは今年のジロも総合優勝する事ができれば、3度目の優勝となりますね。今年は他のレースを捨ててジロのみに集中するようです。ただ、若干年齢を重ねているのは不安要素でしょうか。
そして我らが「新城幸也」にも頑張ってほしいです!昨年は骨折であまり活躍できなかったので、今年は何かやってくれると期待しています。後はTTが得意な「ヨン・イサギレ」がツールではエースとなりそうです。
バーレン・メリダを支えるのは当たり前ですがメリダです(笑 日本でも認知度が上がっているブランドですね。チームはエアロタイプの「リアクト」とオールラウンダーの「スクルトゥーラ」を使い分けます。後、コンポはシマノ、ホイールはフルクラムとなっています。
BMC RACING TEAM/ビーエムシー レーシングチーム
全体的に年齢が高く、いぶし銀なイメージがありますが総合力が高い大人のチームとなってます。世界ロード選手権のチームTTでは常に表彰台の常連で、グランツールでのチームTTでも必ず優勝争いに食い込んでくるほど選手個々の能力とチームワークが素晴らしいです。今は引退してしまいましたが、2011年ツールで「カデル・エヴァンス」が総合優勝しています。
一昔前にチーム・スカイで最強のアシストとして一世を風靡した「リッチー・ポート」は、移籍してエースとなってからの成績は今ひとつ。とはいえ昨年のツールでは総合5位に入ってます。今年はもう一段階上の成績が欲しい所です。
その他、リオデジャネイロオリンピック ロードレース金メダルの「ヴァン・アーヴェルマート」はワンデーレースやグランツールの区間賞を獲りに行きます。また、現在のTTスペシャリストでトップ3に入ると思われる「ローハン・デニス」、近年はやや調子を落としていますが、グランツール上位の常連「ティージェイ・ヴァンガードレン」とタレントは揃っています。
このチームのマシンは、弱虫ペダルの主人公である小野田君も乗っているBMCのバイクです。まじめで質実剛健なイメージのBMCは、独自のTCCテクノロジーを取り入れ、優れた乗り心地を実現しています。コンポとホイールはシマノ製となっており、細部までまじめで実直な感じに仕上がっています。
BORA-HANSGROHE/ボーラ・ハンスグローエ
2010年の創立以来、ハンスグローエとスペシャライズドから支援を受け、初めて「UCIワールドツアー」への昇格を果たしたドイツのチームです。昇格できた要因は、ただ資金が豊富になっただけでなくティンコフから「ペテル(ペーター)・サガン」「ラファウ・マイカ」という強力な選手を獲得し、UCIポイントが跳ね上がった事が大きいですね。
何といっても現役最強の一人「ペテル・サガン」は大注目です。世界選手権を2連覇、ツールのポイント賞を5連覇をはじめ数々の大会を荒らしまわるスロバキアの怪童です。元々マウンテンバイクの選手で、手放しウイリーなど半端ではないバイクコントールでも有名です。新興チームでアシストの力が弱いとはいえ他チームのトレインに無賃乗車して勝利を重ねるのは間違いないでしょう。
余談ですが、今でもロードバイクよりマウンテンバイクが好きなんだとか・・。そして、その奔放なキャラクターから、英国の金融雑誌でビジネス的影響力を持つ人物ランキングで世界26位となり、サッカーのリオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドより上位に位置しています。
サガンに負けない実力を持っているのは山岳のスペシャリスト「ラファウ・マイカ」です。ツールで山岳賞の水玉ジャージを2度獲得した実力者で、今年は総合優勝も狙ってくるかもしれませんね。ただ、サガンとマイカ以外の選手で飛びぬけた選手はおらず、アシスト力には若干不安が残ります。
エースのサガンが得意とするスピードレースで活躍するのがスペシャライズドのエアロロード「ヴェンジヴァイアス」です。流線型のボディ、独特のブレーキシステムなど、もう見た目からパンチ力が違いますね。
自転車専用の風洞実験装置から生まれたその姿は、最高のエアロダイナミクスを発揮できるように設計されています。また、コンポはシマノ、ホイールはロヴァールとなってます。
CANNONDALE DRAPAC/キャノンデール・ドラパック
アメリカの有名フレームメーカー「キャノンデール」がメインスポンサーを務めるチームです。2016年は期待して獲得したオールラウンダー「リゴベルド・ウラン」とベテランの「ピエール・ローラン」が不発・・。結局年間で10勝しかできなかったです。
そんな事もあり今年は現実路線に変更。グランツールよりワンデーレースに力を入れるようですね。昨年のレースを観戦していて「キャノンデールはチームとしてうまく行ってないなぁ」というのが個人的な感想でした。タランスキー、ウランと良い選手はいるので頑張ってほしいです。
「リゴベルド・ウラン」はBMCの「リッチー・ポート」と同じようにチームスカイで圧倒的アシスト力を発揮して注目された選手です。その後、エースとしてキャノンデールに移籍しましたが目立った活躍はできていません。ただ、現在のロードレース界を席巻しているコロンビア選手旋風の先駆けであり、まだ年齢も30歳と十分戦えるので今年は狙ってほしいですね。
その他、「アンドリュー・タランスキー」もグランツールで上位に食い込める実力の持ち主で、ワンデーレース路線に切り替えたキャノンデールで区間優勝を狙いやすくなりました。また「セップ・ヴァンマルケ」は荒れた路面の石畳が得意な選手で、特別なクラシックレースで勝利を目指します。
コース設定によってエアロロードとオールラウンドを使い分けるチームが多いですが、キャノンデールはオールランドタイプの「スーパーシックスエヴォ」のみで戦います。細身のフレームは空力性能も備えており、これ一台で平地から山岳までこなします。また、コンポはシマノ、ホイールはマヴィックとなっています。