ロードバイクに乗っている人が徐々に増えている昨今ですが、自転車ロードレースを題材にした小説は珍しいんじゃないでしょうか。しかもミステリー要素も含んだ作品となればかなり異色です。
そんな小説を次々と生み出している近藤史恵さんのサクリファイスシリーズを簡単に紹介します。紹介するのは「サクリファイス」「エデン」「サヴェイヴ」「キアズマ」「スティグマータ」「コミック版サクリファイス」の6冊です。どれも本当に面白いので、記事を読んで気になった人は読んでみてください。
サクリファイス
ミステリーや推理要素を含んだ自転車ロードレース小説の第1弾です。陸上競技からロードレース選手へと転向した白石 誓(しらいし ちかう)、通称「チカ」を主人公に話が進みます。チカは陸上でオリンピックも目指せた逸材だったのですが、勝利への重圧と周りの期待に嫌気がさいてロードレースへと転身しました。
しかしながらロードレースでは飛びぬけた才能があるわけではなく、個性が強いチームメイトたちに囲まれながら、アシストとしてチームを助けます。ロードレース特有の駆け引きもしっかり表現しながら、誰が味方で誰が敵なのか最後まで分からないミステリー展開が興味をそそります。
また、ロードレースの駆け引きや人間関係についてわかりやすく書かれているので、ロードバイク初心者でも楽しく読める内容となっています。おすすめです!
エデン
前作「サクリファイス」の続編となります。スペイン、そしてフランスのチームに移籍したチカが主人公です。なぜチカが海外のチームへステップアップできたのかは前作を読みましょう(笑
なんとチカは今作でツール・ド・フランスに出場する事になります!そしてツール直前で事件が・・。スポンサーの撤退によりチームの解散が決まってしまいます。その報告を受けて、監督は別のチームのアシストをするようチカにオーダーします。
2転3転するレース展開は非常に面白いです。チカはオーダーに対してどういった判断を下すのか?前作に続きロードレースの醍醐味である人間同士の駆け引きを、面白くまとめてある作品ですね。
サヴァイヴ
サヴァイヴは前2作に絡んだエピソード6編を書いた、短編オムニバス集です。
1話の「老ビプネンの腹の中」は、チカが海外チームに引き抜かれてから、事件に遭遇し、不安定な気持ちのままワンデーレースに挑戦します。
2話の「スピードの果て」では、サクリファイスの2年後にチカの元チームメイトが悲劇をロードレースで克服する内容となってます。
3話「プロトンの中の孤独」、4話「レミング」はチカがロードレースに転向するずっと前の話です。後にチカチームメイトになる選手のエピソードが語られます。
5話「ゴールよりももっと遠」は、チカが日本のチームに入って間もなくのエピソードです。チームメイトの石尾と赤城を中心に話が進みます。
6話「トウラーダ」は前作エデン後のチカにまつわるエピソードですね。チカはポルトガルのチームに移籍しますが、チームメイトのドーピング問題に直面します。
キアズマ
この作品も自転車ロードレース小説ですが、前作とは一切関係がない大学の自転車部が舞台となり、チカなどのキャラクターは一切登場しない新しい物語となっています。また、この作品は全回の3作に比べるとミステリーや推理要素はなくなっていて、純粋なスポーツ小説の色合いが強いですね。
主人公の岸田 正樹(きしだ まさき)は普通の大学生だったが、不運な事故で自転車部の村上を骨折させてしまう。村上は正樹に代わりに自転車部に入る事を頼まれ、責任を感じて入部することに・・。正樹はどうなってしまうのか?
正樹の動向も気になりますが、ロードレースの疾走感と緊張感を上手にあおっているので、ついつい引き込まれて今します。自転車ロードレースの面白さをわかりやすく理解できる内容となっています。
スティグマータ
この作品では、チカが帰ってきました!(笑 再びツール・ド・フランスを舞台にしており、自転車ロードレースの駆け引きや選手の心理描写を細かく表現しています。1作目の日本でチームメイトだった実力者「伊庭」と再会し同じチームとして走るのはワクワクします。
ただ、この作品のチカは体力的に落ち始める30歳となっています。はたしてチカはどのような活躍を見せれるのか・・。面白いですよ!
コミック版サクリファイス
1作目のサクリファイスは漫画化されています。ストーリーを忠実に再現してあるので、活字が苦手という人にはおすすめです。個人的に絵も見やすくて良いと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか?サクリファイスシリーズはただのスポ根小説ではなく、ロードレースの醍醐味や駆け引き、裏側の人間模様を描いた大人の小説です。Amazonの評価ものきなみ高いので多くの人が楽しく読めるでしょう。