ロードレースの世界3大大会のひとつ「ブエルタ・ア・エスパーニャ」が8月19日(土曜日)から始まりますね。その特徴と面白さ、2017年大会の見どころや注目選手について紹介します。個人的には「ツール・ド・フランス」や「ジロ・デ・イタリア」よりも面白い大会だと感じてます。
ブエルタ・ア・エスパーニャの特徴と面白さ
「ブエルタ・ア・エスパーニャ(以下ブエルタ)」は、「ツール・ド・フランス(以下ツール)」や「ジロ・デ・イタリア(以下ジロ)」と並んで世界3大大会と言われていますが、近年は最も面白いレースとして非常に人気があります。「一番面白いのはブエルタ」という人は多いんじゃないでしょうか。
ハイスピードな展開
ブエルタは、ツールやジロに比べて1ステージの距離がやや短くなっています。そのためハイスピードの展開になりやすいです。ただの平坦コースでも気の抜けない面白い展開になることが多く、ゴール手前だけ短い上りになっているなどトリッキーなコース設定が多いのも特徴です。ピュアスプリンター以外の選手でもポイント賞や、平坦ステージでの勝利の可能性があるので見どころが満載です。
厳しい山岳ステージが多い
なんといっても厳しい山岳ステージが多いのが特徴です。2017年大会は、本格的な山岳ステージが5、中級山岳を含むアップダウンが激しいステージが8、平坦ステージが6、タイムトライアルが2という割合です。その中でゴールが上り山頂となっているコースは、21ステージの約半分の10ステージとなっているので、参加選手はピュアスプリンターが少なめで、パンチャーやクライマーが多くなっています。
また、アップダウンや厳しい山岳、山頂ゴールが多い事で、レースが目まぐるしく動き、逆転に次ぐ逆転といった展開になりやすいのも面白いところです。最後まで総合優勝、山岳賞、ポイント賞争いがもつれるので、ワクワクするようなロードレースが見れますね。
緩くて楽し気な雰囲気
ツールやジロは良くも悪くも興行イベントとして洗練されている感じがしますが、ブエルタはどこか緩くて楽しむ雰囲気が伝わってくる大会です。逃げ集団とメイン集団のタイム差計測が適当だったり、紹介されている選手とテロップの選手が全然違ったりと、ツッコまずにはいられない場面が多々あります(笑
しかし、ゆる~い雰囲気もロードレースの魅力のひとつです。解説者の方もまったりツッコんだりしてなごやかにレースは進みます。ブエルタでの間違いやミスはご愛嬌ととらえて楽しみましょう。
雄大な景色
ツールやジロは、綺麗な建物や雄大な自然の中を走ることが多いですが、ブエルタは殺伐とした荒野や、岩肌が露出した山道などの景色が多いです。綺麗な景色もいいですが、どこまでも続く雄大な景色の中を進む自転車の集団はかっこいい感じがします。
また、周りに何もない荒野では強風をもろに受けるので、風の影響でレースが大きく動くことも・・。退屈な平坦ステージの中盤戦でも、横風作戦が発動すればレースは一気に面白くなります。
総合優勝の注目選手
全ステージレースの総合タイムが一番良かった選手に贈られる賞です。各チーム最強のエースが総合優勝を狙います。また、実力は拮抗しており、ここに挙げるどの選手が優勝してもおかしくありません。
クリストファー・フルーム(チームスカイ)
2017年7月に開催されたツール・ド・フランスで総合優勝した現役最強の選手です。ただ、連続でグランツールを制覇するにはコンディション的にかなり厳しいものがあるので、本来の実力をどこまで発揮できるのかが未知数です。もし、ツールに続きブエルタでも総合優勝できたらかなりの偉業です。
アルベルト・コンタドール(トレック・セガフレード)
現在34歳と、スポーツ選手としては下り坂にさしかかり、今年限りで現役引退を表明している伝説の選手ですね。2017年のツールではトップ集団に食らいつくものの、離されてしまう場面がたびたびありました。年齢からくる衰えと、ツールの疲労があるのでブエルタはなかなか厳しいでしょう。
ファビオ・アル(アスタナ)
ニーバリの後継者として期待され、着実に力をつけている27歳です。2017年のツールでは、王者フルームをあと一歩というところまで追い詰めましたが、最後に失速して5位に終わってしまいました。10km以上の長い上りや、1級以上の山岳が連続するステージをやや苦手としている感じがありましたが、ブエルタではどうでしょうか。まだ若くて回復力がありそうなので、もしかしたらフルームより有利かもしれませんね。
ロマン・バルデ(アージェードゥーゼール)
厳しくて長い山岳を得意としているクライマーです。この選手も2017年のツールに出場しており、最後まで粘りの走りを見せて見事総合3位に輝きました。生粋のクライマーだけに、ブエルタのコース設定だとより力を発揮しそうです。
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(バーレーン・メリダ)
「メッシーナの鮫」の異名をとる熱くて攻撃的な走りが特徴の選手です。過去に3大大会すべてで総合優勝を獲得していますが、コンタドールと同じく年齢を重ねているので少し衰えている感じがします。ただ、まだ32歳なのと、2017年7月のツールには出場しておらずコンディションがいいはずなので、まだまだチャンスはあるでしょう。個人的に大好きな選手なので一番応援しています。
ステフェン・クライスヴァイク(ロットNLユンボ)
これまでジロで3回の入賞経験がある選手です。特に2016年ジロは、不運な落車がなければ総合優勝していたでしょう。やや好調と不調の波が激しい傾向がありますが、好調であれば総合争いに絡んでくる選手です。要注目です。
エステバン・チャベス(オリカ・スコット)
小柄で小さい典型的なクライマータイプの選手です。2017年7月にはツール初参加をはたしましたが、とりあえず経験を積むといった感じの走りが印象的でした。もしかしたら、ツールはブエルタへの調整を含めて抑えて走っていたのかも・・。それだけに今回のブエルタでは全力でくると予想しています。
ブエルタのコース設定は、生粋のクライマーであるチャベスに向いていると思うので、どのような走りを見せてくれるか楽しみです。さらに下で紹介するイェーツ兄弟とは同じチームなので、お互い協力すればかなり有利となるでしょう。
アダム・イェーツ(オリカ・スコット)
下のサイモン・イェーツとは、双子の兄弟です。まだ24歳と若いですが近年の2016年のツールで新人賞を獲得するなど目立つ活躍を見せています。新人の中ではトップクラスの実力を持ち、今後グランツールで何度も見るであろう選手です。2017年のツールは出場していないのでコンデションも整っていると思います。どんな活躍が見れるか楽しみです。
サイモン・イェーツ(オリカ・スコット)
上のアダム・イェーツとは、双子の兄弟です。2017年のツールに出場して新人賞を獲得しています。実力は十分ですが、ツールの疲れが残っていると思います。おそらく今回は、同じチームメイトのアダム・イェーツとエステバン・チャベスのアシストとして活躍する可能性が高いです。
ポイント賞の注目選手
ステージの途中やゴールに設けられたポイント地点を上位通過するともらえるポイント数を争う賞です。しかし、ブエルタのポイント賞予想はかなり難しいのでパスします(笑 ツールやジロであれば山岳をこなせるパンチャーかピュアスプリンターを推すところですが、ブエルタはかなりクセが強いコース設定なので予想が難しいです。
近年は、どちらかといえばクライマータイプのパンチャー「アレハンドロ・バルデルデ」や、ワンデーレースのペシャリスト「ファビオ・フェリーネ」がポイント賞を獲得しています。総合優勝や山岳賞で挙げている選手や全くの無名選手にも、ポイント賞獲得の可能性が十分にありますね。
山岳賞の注目選手
山岳の頂上にある山岳ポイントの獲得数で争う賞です。生粋のクライマーが狙う賞ですね。
ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグローエ)
ツール・ド・フランスで2度山岳賞を獲得している実力派クライマーです。今年のツールにも出場しましたが、第10ステージで残念ながらリタイヤとなってしまいました。その分、ブエルタでの活躍が期待されます。ここでは山岳賞の選手として紹介しますが、ブエルタでは総合優勝を狙ってくる可能性もあります。
ジュリアン・アラフィリップ(クイックステップフロアーズ)
ツアー・オブ・カリフォルニアでの総合優勝の経験もある若手選手です。基本的にクライマーですが、オールラウンドな力もあるので総合優勝、もしくはポイント賞と状況次第で狙いを変えてくるかもしれません。
オマール・フライレ(ディメイションデータ)
2015年、2016年と立て続けにブエルタで山岳賞を獲得している選手です。もちろん今回も山岳賞に的を絞ってくるでしょう。今年はジロではステージ優勝も成し遂げています。2017年のツールにも参加しましたが、ブエルタのために力を抑えていたのか目立った成績は残していません。
ワレン・バルギル(サンウェブ)
2017年のツールでは圧巻の走りで山岳賞を獲得した選手です。最後の山岳ステージまで気を緩めず全力で走っていたので、ブエルタでの活躍はコンディション的に難しいかもしれませんが、どんな走りをするのかは注目したいです。
ブエルタの視聴方法
ブエルタを日本語の実況解説で観戦するには「Jスポーツ」しかありません。テレビで見るなら「スカパーのJスポーツ」一択で、パソコンなどネットで視聴するなら「Jスポーツオンデマンド」があります。ブエルタはロードレースの中でも特に面白いので、興味がある人はぜひ視聴してみてください。