ロードバイクやクロスバイクといったスポーツ自転車の各パーツを体に合わせて調整する事をポジション調整と呼びます。今回は、簡単にできる基本のポジション調整方法と順序を紹介します。
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【目次】
ポジション調整の重要性
ポジション調整をしっかり行う事で身体に無理な負荷をかけずケガを防ぎ、自転車の性能と個人の能力を十分に引き出す事ができます。どんなに高価で性能の良いロードバイクでも、しっかりポジションを合わせないと力を発揮できませんし無理な態勢で体を痛めてしまいます。
人間の体は身長や体重が同じでも腕や足の長さ、太さ、筋力が違うので個人に合わせたポジション調整が必要です。洋服のサイズのようにLサイズ、Mサイズとざっくりした感じではなく、数ミリ単位での調整が必要になってきます。数ミリだけサドルを高くしたり、ハンドルの高さや角度を変えただけで姿勢と使う筋肉が変わり、長時間のライドでは大きな影響を受けます。
ただ、今回はあくまで基本的な調整方法なので、ロードバイクに乗る目的によっては調整を変えてもいいと思います。ロードバイクに慣れていない場合やゆっくり近場を乗りたい方は基本よりサドルを低く、ハンドルを高くして楽なポジションでもいいですね。逆に速く走りたい人はややシビアでキツめな調整でもいいかもしれません。
ポジション調整の順序
ポジション調整は足の回転に関係するサドルやペダル周りを決めてからハンドルの角度や高さを決めます。ハンドルを先に調整しても、サドルの高さが変わればハンドルの具合もまた変わるので2度手間になります。
具体的には、以下の順番で調整します。
- サドル高さ
- サドルの前後位置
- クリート位置
- ハンドル角度
- ハンドル高さ
- ステム長さ
まずは体に合ったサイズの自転車を買う
まずはスポーツ自転車を購入する時に各パーツのサイズをしっかり確認して選びましょう。サイズが間違っているといくらポジション調整しても快適に乗れません。もしパーツサイズ選びに失敗したら、後で修正するのはお金と手間がかかるので慎重にチェックしてください。フレームのサイズを間違えた場合は修正できません。(参考記事:各パーツのサイズと選び方の参考ページはこちら)
フレームサイズは自分の身長に合わせてトップチューブ(ホリゾンタル換算値)の長さを確認します。体に比べて小さめのフレームならば後でステム交換やサドルを後ろにする事で調整できますが、大きいフレームはどうにもできませんので注意。
身長とフレームサイズの対応の目安をまとめたので参考にどうぞ。正確な対応表はフレームメーカーごとに違うので、メーカーの公式サイトで身長とフレームサイズの確認をおすすめします。
トップチューブ長(mm) | 身長(cm) |
---|---|
480 | 157.5~162.5 |
490 | 160~165 |
500 | 162.5~167.5 |
510 | 165~170 |
520 | 167.5~172.5 |
530 | 170~175 |
540 | 172.5~177.5 |
550 | 175~180 |
560 | 177.5~182.5 |
570 | 180~185 |
580 | 182.5~187.5 |
590 | 185~190 |
600 | 187.5~192.5 |
ロードバイクやクロスバイク、マウンテンバイク。グラベルロードは高価な自転車です。見ただけで購入せず、しっかり試乗させてもらってフレームサイズをお店の人に相談してから購入しましょう。
サドルの高さ
サドルの高さはポジション全体の基準となるので一番最初に合わせます。サドルの高さによってハンドル周りのポジションも決まってくるのできちんと調整しましょう。
サドル高さの調整方法
スポーツ自転車に乗るときの靴を履きペダルにカカトを乗せてから、膝をしっかり伸ばし脚をまっすぐにして、ペダルをサドルから一番遠い下の位置に合わせます。
ペダルが一番遠い位置で膝が伸びきりカカトがぴったりサドルに乗っていたら適正なポジションです。調整の必要はありませんので、次に行きます。もし膝が少しでも曲がっていたらサドルが低いです。シートポストを伸ばしてサドルが高くなるように調整しましょう。逆に膝をしっかり伸ばしてもカカトとペダルの間に隙間があればサドルが高いのでサドルを低くしましょう。このチェック方法をサドル高さが適正になるまで繰り返します。
これ以外にも「股下寸法×0.86~0.88」=「クランク中心からサドル座面までの寸法」の方程式でサドル高さを決める方法もあります。ただ、この方法は面倒ですし、股下の計測方法やサドル高さ寸法の測り方が人によって微妙に違い、適正ポジションがズレでしまうので難易度が高いです。
サドルの前後調整
次にサドルの前後を調整します。調整前に五円玉などのオモリに糸を括り付けた道具を作っておきます。糸の長さは1mもあればいいです。そしてサドルにまたがり普段座っている場所にお尻を合わせて左右のペダルを地面と水平に合わせましょう。壁際で壁に片手を付きながらやるといいですよ。
左右のペダルを地面と水平に合わせたら、糸を膝の皿の下にあるくぼみに当てて五円玉を垂らします。そして横から見て垂らした糸がペダルの軸と同じ位置にあれば適正なサドル位置です。つまりペダルが3時の位置の時に横から見て膝の皿の下のくぼみとペダルの軸の中心が垂直の位置にあればOKです。
垂らした糸がペダル軸と合うようにサドルを前後に動かしながら適正なポジションになるまで繰り返します。一人では横から見れないので、乗りながら上からペダルの軸と糸の位置を確認します。他に人がいれば横から見てもらいましょう。
余談ですが、2010年くらいから前乗りでポジションを合わせるスタイルが欧州から広がり始めました。ロードバイクの性能が低く軽いギアが無かった古い時代は後ろ乗り気味にして、腕で引き付ける力と脚の力で重いギアを回すスタイルが主流でした。なので膝の皿とペダル軸を合わせてやや後ろ乗りで調整していました。
しかし現在はバイクの性能が上がりギアも軽いのがあるので、体重をうまく使える前乗りが主流となってきています。前乗りで調整する場合は、膝の皿ではなく膝関節の真ん中とペダル軸を合わせましょう(上記画像の赤線の位置)。少しサドルが前に出る調整ですね。
サドルを前に出すことでケイデンス(ペダルの回転数)重視のポジションとなり、持久力を消費しますが脚の力を温存して高速で長距離走れます。レースなど本格的に走りたい人には前乗りが向いています。後ろ乗りは脚の力を消費しますが持久力を温存できるので、ゆっくりロングライドやサイクリングに向いています。好みで調整してください。
サドルの高さと前後の位置が適正であれば、走っていてペダルが一番下に着た時に少し膝が曲がるくらいに収まるはずです。ここで膝が伸びるポジションだと脚を痛める可能性があります。逆に膝が大きく曲がるようだと体重がうまく使えず脚の力で回すペダリングになります。また、たまにサドルを前下がりの斜めに取り付けている人がいますが、座面が地面と平行になるように取り付けるのが基本です。
ここで紹介した調整方法はあくまで基本的なポジションを出すやり方です。調整が終わった後に違和感があれば数ミリ単位で動かして自分が一番快適な位置を探してみてもいいでしょう。
クリート位置の調整
自転車のペダルをビンディングペダルに変えている場合は、クリートの取り付け位置も調整します。基本は拇趾球と小趾球を結んだ線がペダル軸と重なるように調整しますが、ロードレース本場の欧州ではややカカトより(深め)が基準となっているのでそこを考慮してもいいでしょう。
クリートは前後左右に動かせる幅がとってありますが、よくわからない人は目盛りの真ん中の位置にまっすぐ取り付けて、その後に違和感があれば調整してみましょう。
クリートの左右の位置
左右の位置の基本は骨盤、膝、足首がまっすぐ平行になるように調整します。左右の骨盤と膝、足首の関係が八の字に開くとペダルを回した時に足の力が外側に逃げてしまいます。反対に骨盤より足首が狭くなると内側に力が逃げます。
お尻の骨盤が左右に大きい人は、足の位置も外側になるようにクリートを靴の内側方向に動かして調整します。逆にお尻の骨盤が小さい人はクリートを外側に動かして調整します。その他、O脚の人はクリートをやや内側に、X脚の人はやや外側に取り付けるといいですよ。
ハンドルの角度
ハンドルの角度は「シフトレバーと下ハンドルは持ちやすいか?」「シフトレバーと下ハンドルを持ってブレーキはしっかり引けるか?」を確認しながら調整します。基本はハンドルよりもシフトレバーのラインがやや上にある位置です。極端に上下に動かすとポジションがおかしくなるので、調整時は少しだけ動かしてください。
シフトレバーを下げる(おくる)
シフトレバーの位置を下げる事を「おくる」と言います。おくるとシフトレバーを持った時に、より低くきつい姿勢になりますが空気抵抗が低減できるスピード重視のポジションになります。また、下ハンドルが近くなり持ちやすくなります。スピードを上げて走りたい人におすすめです。
シフトレバーを上げる(しゃくる)
シフトレバーの位置を上げる事を「しゃくる」と言います。しゃくるとシフトレバーを持った時に上体が起きて楽な姿勢になりますが、空気抵抗が増します。また、シフトレバーを近くなり持ちやすくなるので、手が痛くなったり疲れやすい人、腰が張りやすい人におすすめです。
ハンドルの高さ
ハンドルの高さは「ハンドルの角度」と同じく筋力や柔軟性、走る目的で変わってきます。ハンドルが高いと空気抵抗が増しますが姿勢が楽になります。ハンドルが低いと腰が深く折れて姿勢がきつくなりますが、スピードは上がります。
基本的に長距離乗っても腰や肩、首がきつくない高さにしましょう。初心者であればサドルとシフトレバーの高さが同じくらいか、サドルがやや低い位置がいいでしょう。慣れてきたらハンドルを下げてより前傾姿勢のポジションにします。
高さを変える方法は、ステムのネジを緩めてシートポストから抜いて、スペーサーの位置を変えて組付けます。
ステムの長さ
ステムの長さを変えるには、長さが違うステムを購入して交換する必要があります。ステムを長くするとハンドルが遠くなり腕をより伸ばした低い姿勢になります。ステムを短くするとハンドルが近くなり上体が起きる姿勢になります。
ロードバイクのステム長さは1cm単位で変更できます。長さの幅は60mm~150mmくらいですが、100〜110mmくらいが基準になります。短すぎても長すぎても奇抜なスタイルになるので注意。短すぎるとハンドルのコントロールが難しくなり、長すぎると腰や肩に負担がかかりケガのもとになります。
適正なステム長は、力を抜いてロードバイクに乗った時に、体幹と腕の角度が90度で肘が少し曲がる程度になるように合わせるのが基本です。実際に乗って他の人に見てもらうといいでしょう。
乗りながら微調整
ハンドル回りは体幹と腕の角度が90度で肘が少し曲がる程度が理想ですが、最初は体に負担がかからず無理しない程度に調整しましょう。長距離乗り込むと「ハンドルが高いな」とかいろいろと思う部分が出てきます。違和感を感じたら少しづつ自分に合ったポジションに調整していきましょう。
ただいきなり1cmとか大きく動かすと負担が大きく適正ポジションが出ないので変更は1~3mm程度にします。調整するときはある程度の距離(最低50kmくらい)を乗ってから1か所だけ変更します。短距離しか乗っていない、または同時に2か所以上変更すると良し悪しがハッキリせずポジションがバラバラになるので注意です。
趣味で乗る場合は安全に体を壊さないようにすることが第一なので体に負担のかからない範囲で調整する事が重要です。体に痛みなどがあればポジションを見直してみましょう。膝が痛いときはサドルを下げたり、腰が痛くなればハンドルを高くしたりします。
まとめ
- スポーツ自転車を購入する際はサイズを必ずチェック!
- ポジションの調整には順序がある。
- 乗って違和感がある個所は1~3mm程度で微調整。
- 楽しい自転車生活には体を痛めないことが大事!無理のない範囲で調整しよう。
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