自転車ロードレースの面白さを伝えたいと思い書き始めた記事の第2弾です。前記事のロードレースの面白さ①では、空気抵抗がある事で生まれる駆け引きと、心理戦の重要性を簡単に書きました。そして今回は、レースの種類とレース展開について書きます。
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自転車ロードレースは2種類
自転車ロードレースは大きく分けて2種類あります。1つはツール・ド・フランスのような数日かけて行われるステージ形式の大会で、ステージレースと呼ばれます。
もう1つは1日ですべてが終わるワンデーレースで、その中でも重要で格式の高い物はクラシックレースと呼ばれています。実は前者のようなステージレースは数が少なく、世界中で開催されている自転車ロードレースの多くがワンデーレースとなります。
ワンデーレース(クラシックレース)
ワンデーレースは1日で勝負が決まる為、凸凹の石畳や信じられない斜面の坂道など難所を多く取り入れたコースがあり、設定距離も200~300kmと長くなってます。
レース展開としては、平坦基調のコースになると最後は純粋なスプリント勝負になる事が多いです。しかし、厳しい登りなど難所があるコース設定では、登りもこなせるパンチャー系の選手が強く、石畳があるコースではオフロードに強い選手が有利となります。
なので、わずかな起伏や路面の状態など、少しコース条件が変わるだけでレース展開もまったく違ってきます。選手も得意不得意が細かくあり、自分にぴったりと合ったコース設定だと全力で優勝を狙い、チームメイトもその選手をアシストします。
ステージレース
数日に渡って行われるレースで、コストもかかりますし準備も大掛かりになるので開催数は少ないです。そして、ステージレースの中で最も有名なのが「ツール・ド・フランス」、「ジロ・デ・イタリア」、「ブエルタ・ア・エスパーニャ」です。まとめて、3大ツールやグランツールとも呼ばれます。
1レースの距離は150~250kmとワンデーレースに比べて短いですが、21日間も走り続けるのでかなり過酷で体力を消耗します。コースは日によって平坦ステージ、個人タイムトライアル、山岳ステージ、チームタイムトライアルと違います。
また、全てのステージの合計タイムで争う総合優勝の他に、山岳賞やポイント賞なども設定されています。各チームごとに得意分野があり目標とするターゲットが違うので、別々の目標を持つチーム同士で利害関係が一致したら協力したりするなど、ワンデーレースに比べて更に心理戦の度合いが深くなります。
例えば、総合優勝を狙うAチームが山岳賞を狙うBチームと協力して山を登り、Bチームに1位でゴール通過させ山岳ポイントを与える代わりに前を引かせ、体力の消耗を抑えながら他チームとのタイム差を拡げるといった感じです。その場面場面で状況がコロコロ変わり、協力したりしなかったりと面白いです。
ステージレースのコース設定
「平坦ステージ」「山岳ステージ」「個人タイムトライアル」「チームタイムトライアル」それぞれのコース設定の特徴をまとめました。
【平坦ステージ】
登りや降りが緩やかでスピードが上がりやすステージ。最後は逃げ集団を吸収して純粋なスプリントになる事がほとんど。最後のスプリントまでは結構退屈だったりします。
ただ、一流スプリンターたちのガチ勝負や、残り10kmくらいから行われるポジション争いなどは見ごたえあります。そして、強い風が吹いていたり、石畳があるなどトリッキーなコースでは序盤からでも荒れた展開になりやすいので面白いですね。
【山岳ステージ】
抜きつ抜かれるの攻防で総合優勝争いが激しくなるので、自転車ロードレースで一番面白く観客も盛り上がるステージです。特にアルプス山脈などの長くてキツい登りを走っている選手は熱くてカッコよく、ついつい食いついて観てしまいます。
また、坂道ではスピードが落ちるので観客も走りながら並走して応援したり、取り囲んで熱狂的に応援します。いろんな国の旗が見られるのも楽しいですね。
【個人タイムトライアル】
30~50km程度の短い距離を順番に1人ずつ走るので、タイム差が付きやすいステージです。タイムトライアル専用のTTバイクに乗って走り、ヘルメットの形も極限まで空気抵抗を減らす独特な形をしています。大柄な体格でパワーと持久力を備えたクロノマンタイプの選手が活躍します。
【チームタイムトライアル】
各チームごとにタイムトライアルに挑戦するステージです。5番目にゴールした選手のタイムが記録となるなど、チーム全体の独走力が問われる自転車競技です。チーム全員でローテーションを行い、体力消耗をシェアしながらゴールを目指します。
タイムトライルに強い選手が長めに先頭を引いたりと作戦も重要で、体力を消耗しないために無駄のないローテーション技術も必要です。
設定されている賞
選手たりが狙う賞にもいろいろあります。
【総合優勝】
最も栄誉ある賞で、全てのステージの合計タイムが1番早かった人がもらいます。山岳コースやタイムトライアルではタイム差が広がりやすいので、ヒルクライムや独走力が強い選手に有利です。総合優勝を狙うチームは、アシスト全員が一人のエースのために犠牲になって走ります。
【山岳賞】
標高が高い山頂を上位通過した者に与えられる山岳ポイントの合計が1番多い選手に送られます。山の高さによって超級、1級、2級、3級など決められていて、もらえるポイント数も違います。山頂がゴールになっていればポイント2倍など面白いルールもあり、自分の体力と相談しながらどのステージでポイントを稼ぐか、戦略性も重要です。
【ポイント賞】
平地ステージの中間やゴールにポイント地点が設定されいて、そこを上位通過すればポイントが溜まります。そして、全ステージを終えて合計ポイントが1番多い選手が獲得します。基本的に平地に強い選手が有利ですが、ある程度登りもこなせないと獲得は難しいですね。
【新人賞】
25歳以下で総合タイムが最もよかった選手に送られます。将来の有望選手が争います。
【敢闘賞】
ステージごとに目立った頑張りを見せた選手に送られます。主に逃げ集団で最後まで頑張った選手が選ばれる事が多いです。
【ステージ優勝】
各ステージの優勝者もクラシックレースで優勝した事と同じくらいの栄誉があります。レース展開によっては予想外の選手が勝つ事もあり、非常に面白い勝負が見られます。
風や天候、コース設定とレース展開
心理戦の駆け引きは、風や天候、コース設定とも関係してきます。観戦する方も、レースの細かい状況を見ながら選手やチームの動きを予想すると面白いですね。
風の向きと強さ
向かい風の場合は逃げ集団にとっては不利となります。少ない人数で走る為一人一人の負担が増え疲れやすくなるのに比べ、メイン集団は人数が多く一人の負担が少ないからです。追い風の場合は、逆に逃げ集団にとって有利となります。
横風の場合は、風を避けるための集団の隊列が横向きになり、道路の幅が狭いと集団が分断しやすくなります。たまに横風を使って奇襲をかけてメイン集団を分断させ、ライバルに差をつけようとするチームもあり、レース展開が面白くなります。
天候
雨の場合は路面が滑りやすくなりテクニックがある選手が有利になる為、スピードが出る山のくだりなどでタイム差がつく事もあります。特にヨーロッパの路面は日本と違ってツルツルしているとの情報もあり、雨の日は落車などのリスクも高まります。
コース設定
平地ステージでも小さなアップダウンがいくつもあったり、山岳ステージでも長い平地があったり、山道でも急激な坂や緩やかな坂など同じコースは1つもありません。緩やかな坂が得意な選手や一瞬のスピードが速い選手など選手の特性もそれぞれ違うので、わずかなコース設定の違いでもレース展開に大きくかかわってきます。
選手のコンディション
ステージレースではその日の調子で選手は動きます。例えば前日頑張って逃げた選手は体力が消耗しているので、次のレースは休んだりします。各ステージごとに優勝を狙って本気で走る選手と、休憩する選手がいるのが面白いですよね。
自分が得意な1ステージに全てをかけていて、それ以外ではアシストに徹して体力を温存している選手もいます。
景色も楽しめる
景色を楽しめる事も自転車ロードレースの魅力です。基本的に21日間、同じ道を走らないので様々な景色が楽しめます。ヨーロッパの古い街並みや山、海、時には古い古城などの世界遺産も通ります。また、観光都市ではない一般市民の生活感なども感じられて楽しいです。
まとめ
自転車ロードレースの楽しさは伝わったでしょうか?興味があればぜひ観戦してみましょう。
- ワンデーレースとステージレースの2種類ある。
- コース設定には山岳、平地、TT(タイムトライアル)がある。
- ステージレースには賞が複数ある。
- 風、天候、選手の調子でもレース展開は変わる。
- ロードレースは景色も魅力。
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