自転車ロードレースのドーピング違反検査!プロ選手の私生活は大変

ロードレースが面白い

最終更新日: 2023.11.21

自転車ロードレースのドーピング違反検査!プロ選手の私生活は大変

自転車ロードレースでたびたび話題にあがるドーピング事件。2017年のブエルタ・ア・エスパーニャに出場予定だったサムエル・サンチェス(BMCレーシング/スペイン)に陽性反応が出て暫定的に出場停止となりました。

そこで今回は、自転車ロードバイク界を悩ませるドーピング問題の事情と、プロ選手が受けるドーピング検査の大変さについて書きます。

自転車競技はドーピングが多い

自転車競技は他のスポーツに比べてドーピングが多いです。なぜでしょうか?それはテクニックうんぬんよりもフィジカルの重要度が高いからです。例えばサッカーならドリブルやパス、戦術理解度など単純な体力以外でも勝負できます。

しかし、ロードレースはペダリング等のテクニックもありますが、基本的に持久力やスプリント力などのフィジカルが強い方が圧倒的に有利です。なので、フィジカルを劇的に向上させるドーピングが多いんですね。

自転車レースが行われ始めた1800年代後半は、覚せい剤を使ってキツさを紛らわすドーピングがありましたし、1900年代から現在までさまざまなドーピング方法が考案され横行してきました。

実は、1998年の「フェスティナ事件」(ツール・ド・フランスの最中に、フェスティナというチームから大量の違法薬物が見つかった事件)までは、自転車界はドーピングに寛容な雰囲気で、多くの選手が隠れてやっていました。

なので、ドーピング検査が厳しくなりちゃんと検査して取り締まるようになったのは、ここ20年くらいなんです。特に2010年以降は、検査もかなり強化されています。

自転車レースのドーピングイメージ

自転車ドーピングの種類

現在使われているであろう主要ドーピングの種類をいくつか挙げてみます。どれも体力を増強させますが、副作用とか怖いですね。

EPO(エリスロポエチン)

吸った酸素を全身に運ぶ赤血球の数を増やす薬物です。体に酸素を効率的に運べるため、持久力が向上します。また、EPOを使えばタイムを5%縮めることができると言われています。ヒルクライムやTTでは5%の差はかなり大きいですね。

BB

「自己輸血」とも呼ばれ、自分の血を抜いて保管しておき、血の量が回復したところで保管しておいた血を輸血するドーピングです。体内の血液の量が一時的に増えるので酸素を運ぶ量が増え、持久力が向上します。

自分の血を使うだけなので「見えないドーピング」とも呼ばれ、薬物反応が出ずバレにくいのが特徴です。ただ、現在では異常な血液量を測定する検査もあります。

筋肉増強剤

単純に筋肉量を増やしてパワーを向上させる薬物です。代表的なものに「テストステロン」などがあります。スプリンターが使えば、爆発的な加速力を発揮できるでしょう。

過去の大きなドーピング事件

過去には自転車界を揺るがすほどの名選手がドーピング事件に巻き込まれています。

マルコ・パンターニ

自転車界の大きなドーピング事件 マルコ・パンターニ

 

 

 

 

 

ドーピング問題によって最も悲劇的な運命をたどったのがマルコ・パンターニです。1998にはツールとジロを制覇するなど記憶に残る圧倒的な走りを見せたパンターニ。しかし、1999年に行われた抜き打ちの検査で赤血球濃度の異常が見つかり、この年はレース出場停止処分となります。その後は何とか復帰しようとしますが上手くいかず、2001年にまたドーピング疑惑が発覚し2年間の出場停止処分となります。

ただ、この年代はドーピングへ対しての世間での関心が薄く、多くの選手がやっていたと思われます。突然にパンターニだけに降ってわいた疑惑は、見せしめにされたような気もしますね。当時はドーピングの基準もあいまいだっただけに、OKだと思っていた範囲のドーピングが突然ダメと言われた感じではないでしょうか。パンターニは精神的に相当ショックを受けたと思います。

その後、ピュアでロードレースに全てをかけていたパンターにはメンタルクリニックに通ったり、夜中に道で泣いているといった噂が流れるようになり、2004年にホテルの一室で独り寂しい死を迎えます。後に死因がコカイン中毒であると判明しました。

検査機関としてもドーピングの取り締まり強化の途上にあり、その犠牲になってしまったパンターニ。今でもイタリアでは絶大な人気があり、ジロでは今でも彼をたたえる横断幕をたびたび目にします。

ランス・アームストロング

自転車界の大きなドーピング事件 ランス・アームストロング

アームストロングは、癌を発症した苦難から復活し、1999年から2005年にかけてツール・ド・フランスを7連覇した伝説の選手です。ただし、走りの異常さから周りのライバルからドーピング疑惑をかけられ続けていました。

そして2005年に1度目の引退、その後復帰して2010年に2度目の引退をします。しかし2012年に全米アンチドーピング機関(USADA)によってドーピングが確定し、ツール7連覇を含めた記録は全て抹消とされました。その後、2013年には本人もドーピングを認め、改めてドーピングによる影響が考えられ、検査のさらなる強化が行われました。

アルベルト・コンタドール

自転車界の大きなドーピング事件 アルベルト・コンタドール

圧倒的な強さで数々のビッグタイトルを手にしたコンタドール。彼にドーピング疑惑がかけられたのは2010年のツール・ド・フランスで、クレンブテロールという筋肉増強剤の薬物反応が出てしまいました。

そこから2年間は疑惑のままでしたが、2012年にドーピング違反が正式に認定。2010年から2012年は出場停止処分となり2010年のツール・ド・フランスと2011年のジロ・デ・イタリアの総合優勝は剥奪されてしまいました。

ただ、コンタドール自身ドーピングは否定しており、クレンブテロールの量もわずかで走りを変えるような影響はないんじゃなかったのでは?という見方もあります。おそらくレース前に食べた肉に微量のクレンブテロールが混入していたのではと思われ、コンタドールを擁護する声も多く上がりました。

当時のコンタドールは「強すぎた」ためにドーピングが疑われ確定してしまった悲しい事例です。その後はレースに復帰し、結果2017年を最後に引退するまでツール・ド・フランス2回、ジロ・デ・イタリア2回、ブエルタ・ア・エスパーニャを3回総合優勝しています。もちろん、ドーピングで取り消された優勝を除いてです。すごいですね!

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プロ選手になったらドーピング検査が大変

近年はドーピングへの強化が進み、年々検査が厳しくなっているんじゃないでしょうか。実際に海外のトップチームに所属する選手は、決められた時間に自分の居場所を検査機関に報告し、いつ訪れるかわからない抜き打ちのドーピング検査を受ける必要があります。

この検査は時間を問わず行われているようで、深夜で寝ていようが、トイレにいようが、デート中であろうがお構いなしですね。なので自転車のプロ選手になれば、プライベートも結構大変そうです。ちなみにレース直後もランダムで選ばれた選手と、活躍した選手はドーピング検査があります。

もちろん、私生活の食事や飲み物、病気の薬も気を付ける必要があり、チームによって徹底管理されています。自転車のプロ選手は本当に大変ですね!

最近は機材ドーピングの問題も

フレームにモーターを仕込んでペダルを軽くするなどの仕掛けを「機材ドーピング(メカニカルドーピング)」と言います。近年はアマチュアレースでも本格的な機材ドーピングありましたし、2016年には女子MTB選手、「フェムケ・ファン・デン・ドリエッシェ(ベルギー)」の機材ドーピングが世界で初めて発覚しました。

2017年のツール・ド・フランスでも強すぎたチームスカイにもメカニカルドーピング疑惑がありました。これは結局デマでしたが、あまり強すぎると疑惑をかけられる流れはしょうがないですね。

これに対応するため、大きなレースになれば、フレーム内部をスキャンしてモーターを仕込んでないかチェックしています。今後、テクノロジーが進化すれば、さらに軽量ですぐにはわからない機材ドーピングができそうですけど。

ちなみに海外では電動モーターのロードバイク、クロスバイクの人気が上がっているようです。もちろん、ズルしてレースでいい成績を残すためではなく、単純に楽しむための電動スポーツ自転車です。自分も体力がもっともっと衰えたら電動に乗ってみたいですね。(笑

関連記事:世界で人気上昇中!電動スポーツ自転車

ロードバイクに搭載できる電動モーター VIVAX assist

今後のドーピング対策

現在もツールド・フランスに代表されるようにドーピング違反は止むことを知らず、取り締まりは年々強化されているとはいえ、ドーピング薬も進化しています。

このままではスポンサーから見放されるだけではなく、純粋なプロ同士のバトルを期待するファンも自転車ロードレースから離れていくと思います。さらに、オリンピック種目から自転車競技が外されるという事態すら懸念されます。

ただ、いたずらに検査の増やしたり強化しすぎると選手も大変ですし、それを実地する検査協会の負担も大きくなります。難しいですね…。自分はロードレース観戦が大好きなので、早くドーピングが無くなる事を願っています。

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