ロードバイクやクロスバイクに長く乗っていると異音に悩まされる事が多々あると思います。スポーツ自転車はママチャリと違い、全てのパーツが精密に組まれていますので、ひとつのパーツに少しの異常があれば不快な音が鳴るようになります。
そこで今回は、ロードバイクやクロスバイクで異音が発生するメカニズムと原因を突き止める方法について書きます。異音が気になる際の参考にしてください。
異音の発生メカニズム
異音の発生メカニズムを知っておくと、より深く広い視野で問題に対応できると思います。異音の原因となるのは「摩擦と摩耗」か「変形と亀裂」しかありません。ここでは「摩擦と摩耗」や「変形と亀裂」についてザックリ簡単に説明します。
摩擦と摩耗
ボルトでしっかり固定されているパーツ同士でもわずかな変形によって摩擦(まさつ)が起こっています。例えばハンドルとステムはしっかりボルトで固定されていますが、ハンドルに力をかけるとわずかに歪んでステムとの接触点で摩擦が生じます。その証拠にステムからハンドルを外すと接触面が白くなってたり、細かいこすれ傷がありますよね。
そして摩擦が生じると接触点が摩耗(まもう)し、材料が削れて細かい粉となります。すると削れた粉がさらに摩耗を促進して、パーツの接触面にわずかですが隙間ができ異音の原因となるのです。もし、パーツを固定した部分から異音が発生していたら、パーツを外して接触面の粉をキレイに拭きとり、適正トルクで締め付けるといいですね。
パーツの固定部分以外で、ベアリングは動かすと常にこすれ合っているので消耗が激しいパーツのひとつです。異音が発生したらグリスアップか交換しましょう。
後、ペダル周りは強い力が連続して加わっているので摩耗が激しいです。長く乗ってペダルをバラしてみるとグリスが真っ黒になっています。これは素材が削れてでた粉がグリスと混ざった状態です。この粉を放置するとさらに摩耗が進むので、汚れたグリスはふき取って新しいグリスを塗ってあげましょう。
【自転車の摩耗は3種類】
自転車の摩耗には大きく分けて3種類あります。これを見れば摩耗によってでた粉を定期的に除去してあげる大切さがわかると思います。
■凝着摩耗
各パーツの表面は平らに見えますが、拡大してみると凹凸が無数にあります。そして接触する部分が変形して凝着しちぎれて削れます。これを凝着摩耗といいます。削れた部分は粉となって残ります。
■二元アブレシブ摩耗
金属とプラスチックのように、硬い素材と柔らかい素材がこすれ合う場合、硬い材料の凹凸が柔らかい材料をひっかくように削ります。このような摩耗を二元アブレシブ摩耗といいいます。
■三元アブレシブ摩耗
材料の接触面に削れた粉が残っていると、さらに摩耗を早めて異音の原因となりやすいです。これを三元アブレシブ摩耗といいます。
変形と亀裂
パーツに力が加わり変形する事で異音となるケースもあります。割り箸を軽く曲げるとミシミシと音がしますよね。それと同じです。また、パーツの大きな変形によって亀裂が生じ、さらに亀裂同士がこすれあったり、亀裂が広がる時にも異音は発生します。
特に落車の後など、ロードバイクやクロスバイクに大きな衝撃が加わった後は注意が必要です。フレームの内部など目に見えない部分に亀裂が生じている可能性があります。
ただ、フレーム内部の亀裂による異音の場合は原因を特定するのが非常に難しいです。特別な業者に依頼して特殊センサーで検査してもらう必要があります。費用もそれなりにかかるので痛いですね・・。激しい落車の後に異音が発生したら、まず各パーツをチェックし問題がなければ新しいロードバイク、クロスバイクに乗り換えた方が早いかもしれません・・。
異音の原因を突き止める方法
クルマでも家電でも修理するときに最も重要なのは原因を正確に突き止める事です。これがちゃんとできれば、コストを最小限に抑えて早く修理することができます。原因がよくわからないまま、行き当たりばったりの勘でパーツ交換してたら、費用がかさみますし時間もかかりイライラしてしまいます。なので、ここでは異音の原因を正確に突き止める方を紹介します。
異音の原因を特定するには、異音が発生する状況を様々な角度から確認して可能性をつぶしていく作業が重要です。例えば自分が体験した事ですが、ダンシングの時に右足で踏み込む時だけ「チッ」という異音が発生しました。ここで原因を特定するために状況をまとめてみました。
- 異音はダンシング時だけなのでペダルに大きな力を加えると鳴る。
- 右足2時から4時の踏み込み位置で毎回鳴る。
- 音は小さいけどBB周りから音が鳴っている。
- ダンシング時にロードバイクを振っても状況は変わらない。
以上から原因はクランクかペダル、そしてBBが原因の可能性が高まりました。しかし、クランクには歯の欠けもないですし、手で回してみてもゆがんだり変形している部分はなかったので取り合えず問題ないと判断。そしてペダルにも見た目の変化はありませんし、買ってから1年ちょっとのシマノ105だったので可能性は低いと思いましたが、念のため普通の靴でも乗ってみました。すると、音が鳴らなかったのです!
もし普通の靴でも検証しなかったら、BB交換という大変な作業をやってしまう所でした。その後すぐに予備で持っていた古いビンディングペダルに付け替えて実験したら異音が解消されたので、原因はペダルのクリートを固定する部分だと判明。すぐに新しいペダルを購入しました。このように、異音を解消するにはいろいろな状況で検証して可能性をつぶしながら、正確な原因を突き止める事が重要なのです。
異音を突き止める検証方法
異音を突き止めるには以下のような目線で一つ一つ検証してみましょう。どういった状況で異音が発生するのかを突き詰めていけば原因を正確に特定できるはずです。
【走る状況】
シッティング、ダンシング、自転車を左右に振る、坂道、やや荒れたアスファルトなどで走ってみて検証しましょう。特定の状況だけで鳴る異音であれば原因を突き止める手掛かりになります。例えばダンシングだけの異音ならペダル周りの可能性が高いですし、自転車を左右に振った時の異音ならフレームやハンドル、シートポストなど体重を支えるパーツの可能性があります。
【特定の状況】
ハンドルを切ったり、特定のギア比のみで異音がでる場合があります。このようの特定の状況だけで異音が発生するのが分かれば原因を突き止めやすいですね。
【音の種類】
どんな異音が発生するのかも手掛かりとなります。例えばギシギシといった金属音ならパーツの固定部分の可能性が高いです。カタカタといった不定期な振動音ならサドルバッグやツールボックスの中身が擦れている可能性もありますよね。
【規則的な周期】
チェーン周期、ペダル周期、ホイール周期である一定の間隔で異音が発生する場合、そのパーツの周りが原因の可能性が高いです。接触や異常がないか確認してみましょう。
まとめ
- 異音の原因は「摩擦と摩耗」か「変形と亀裂」のみ。
- 異音の原因の特定は時間をかけて正確に行う。勘で修理すると遠回り。
- 原因の特定にはいろいろな状況を検証して可能性をつぶしていく方法がおすすめ。
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