サドルの高さやクリートの位置、わずかな軽量化にこだわる人はいますが、ブレーキの微妙なセッティングにまで気を遣う人は少ないです。
ただ、ブレーキングとそのパーツは注目してみるとなかなか奥深くて面白いものです。そこで、ブレーキ周りのパーツがブレーキングに与える影響をちょっとまとめて書いてみます。
ブレーキングは多くのパーツが関係している
ブレーキの制動力と感覚を左右するパーツは数多くあります。まず、手で直接握るハンドルの形とシフトレバーの位置で操作性がだいぶ変わります。シフトレバーはメーカーとモデルによって形や大きさが違うのも、ブレーキ感覚に影響するでしょう。
また、ブレーキケーブルの質と取り回しでによって、レバーを引いた時の軽さが違います。何かの雑誌でケーブルメーカーの人が「多くの人はケーブルが長すぎる」と言っているのを見たことがあります。微妙な調整が大事ですね。
後は何といてもブレーキ本体とブレーキパッド(ブレーキシュー)、ホイールのリムが重要になってきます。特にリムとブレーキパッドに至っては、交換するとその違いが初心者でもわかるでしょう。
その他には、路面とこすれながら自転車を止めるタイヤの質や空気圧も、ブレーキングに変化をもたらします。
キャリパーブレーキとディスクブレーキ
最近はディスクブレーキを搭載しているロードバイクが増えていますが、個人的にはディスクブレーキはまだ不要派です。
もちろんディスクは制動力が高くちゃんと使えば安全性が高いのは間違いないです。しかし、ディスク対応のホイールがまだ少ないことと、ホイールの重量増、メンテナンスが難しいことがネックですね。なので、今回はキャリパーブレーキを前提で話をすすめます。
ブレーキ関連パーツの知識
ブレーキ関連パーツの豆知識をいくつか紹介します。知っておくと便利ですよ。
ブレーキ本体のグレード
ブレーキの仕事は運動エネルギーを熱エネルギーに変換して自転車を止める事です。そこで、熱を視覚的に計測するサームグラフィーでの実験で、ブレーキ本体のグレードによる性能差をチェックしてみます。
実験方法は、ホイールを時速50kmで空転させてから急ブレーキをかけて、リムが70℃になるまでの時間を計測します。この時間が短ければ運動エネルギーを熱エネルギーに素早く変換していることになりますね。これで、タイヤのグリップ力やライダーのスキルを省いた、単純な制動性能を確認できます。
さて、ブレーキ本体のグレードによる性能の違いですが、「シマノ105のブレーキ本体&105ブレーキパッド」で実験した場合、時間は52.6秒。次に「デュラエースのブレーキ本体&105ブレーキパッド」で計測すると43秒でした。約9秒も短縮されたことになります。
この結果、グレードの高いブレーキに交換すると、確実に制動力アップにつながると言えます。ブレーキだけ上級グレードに交換する人は結構いますが意味があったんですね!
ブレーキパッドの剛性と強度
ブレーキ面の剛性が高く、精密に平面成形されている方が制動力が向上します。もうひとつ大事なのは、ブレーキパッドとリムの相性ですね。例えば、サーモグラフィーのテストでは、同じアルミリムでもシマノ105のブレーキパッドより、スイスストップ製のより高額なブレーキパッドの方が制動力が高い結果(タイム41.3秒)が出ています。
ホイールのメーカーと、ブレーキパッドのメーカーを同じにするのが基本ですが、他の高級ブレーキパッドを使えばより制動力を高くできそうです。
カーボンリムとアルミリム
カーボンリムにはカーボン専用のブレーキパットが必須なのは皆さんご存知だと思います。しかも各メーカーが指定する純正のブレーキパッドが望ましいです。そしてカーボンリムはアルミリムより制動力は低いのが一般的です。
また、アルミリムの方が放熱性に優れており、ダウンヒルで200℃に達するブレーキ熱に対して強いというアドバンテージを持っています。
エグザリッド処理のリム
最近、高級なアルミホイールリムにはエグザリット処理がされています。エグザリット処理とは、リム面に特殊なトリートメント処理と切削加工する技術で、通常のブレーキング性能の向上は当たり前ですが、雨でぬれても制動距離を普通のアルミリムより18%ほど短縮できる特徴があります。
これは、リムの表面処理だけでなく、ブレーキ面のヤスリ目構造とエグザリット専用ブレーキパットが融合して性能を発揮するからです。またエグザリット処理でアルミリムが硬くなり耐久性と剛性がアップします。
ホイールのスポーク
スポークはブレーキをかけた際に前に進もうとする力を引っ張って止める役割もあるので、スポークの剛性が制動力に影響してきます。ロードバイクの多くはラジアル組が主流となっており、スポーク自体の剛性が高いことが大きなアドバンテージとなっています。
基本的により剛性が高い組み方、素材、形状をしているスポークの方が、より制動力が向上します。
タイヤの幅と空気圧
路面と接触して自転車を止めるタイヤも制動力と大きく関係してきます。単純に細いより太い方が抵抗が大きくなるので、より制動力が発揮されます。最近流行りの25Cタイヤはブレーキ性のも兼ね備えたバランスがいいタイヤと言えそうです。
また、タイヤの空気圧を高くした方が形状変化を抑えられるので制動力が高くなります。ただし、あまり空気圧を上げすぎるとコントロール性能が低下して、逆に横滑りなどの危険が増しますのでそこそこに。
当たり前ですが、タイヤの適正空気圧は安心してブレーキングできるよう計算された数値なので、安全のためにも守るようにしましょう。