自転車のディスクブレーキが登場したのは2015年頃です。UCI(国際自転車競技連合)がロードレースでの使用許可を出してから少しずつ増えていきました。現在ではハイエンドなロードバイク、マウンテンバイクのほとんどにディスクブレーキが標準装備されています。
そこでキャリパー(リム)ブレーキとディスクブレーキの違いと、メリットとデメリットについてまとめます。また、キャリパーからディスクへ交換できるのか?についても書いています。スポーツ自転車購入の際にどちらを選べばいいのか、参考になればと思います。
キャリパー(リム)ブレーキとディスクブレーキの違い
ロードバイクやマウンテンバイクにはブレーキシステムが2タイプあります。一つはキャリパー(リム)ブレーキと呼ばれるタイプで、自転車には長年このタイプが使われてきました。ゴムでホイールのリム(外側)を挟み込むことで回転を止める仕組みです。
もう一つはディスクブレーキと呼ばれるタイプで、ホイールの中心部分に円盤状の金属を取り付けて、その円盤を樹脂や金属で挟み込みブレーキをかける仕組みです。この仕組みは、自動車にも使われています。スポーツ自転車には2015年くらいから使われるようになりました。
ディスクブレーキの機械式と油圧式
ディスクブレーキには機械式と油圧式があります。機械式は、手元で操作するブレーキレバーとブレーキ本体をワイヤーでつなぎ、ワイヤーを引っ張ることでブレーキ本体を作動させます。油圧式はブレーキレバーとブレーキ本体を細いパイプでつなぎ、パイプの中に注入した特殊オイルを押し出すことでブレーキ本体を作動させます。
どちらも見た目に大きな違いはありませんが、油圧式は自動車にも採用されているシステムで小さな力で大きなパワーを伝えることができます。
ディスクブレーキのメリット
ディスクブレーキのメリットについてまとめます。
雨で濡れても制動力が落ちにくい
一番のメリットは濡れてもしっかりとした制動力があることです。キャリパーブレーキで重要なホイールのリム部分は、水たまり泥はねで濡れやすく滑りやすくなります。また、リムは走りを支えるパーツなのでブレーキに特化した素材や作りになっていません。くらべてディスクはブレーキだけを考えた素材や作りになっているので、どんな状況でもしっかりとした制動力を発揮します。
どんな状況でも安定した制動力があることから、悪路を走るマウンテンバイクにはロードバイクより早く普及しました。最近人気のグラベルロードなど、オフロードを走る自転車には最適ですね。
カーボンホイールと相性が良い
カーボンホイールのキャリパーブレーキは、カーボン素材とゴムがこすりあうので制動力に劣り、特に雨の日には滑りやすくなります。また、小石や泥水がリムに付着したままブレーキを操作すると、高価なカーボンホイールが傷ついてしまう場合も・・・。しかし、ディスクブレーキであればカーボンホイールでも安定した制動力を得られ、傷ついてしまうリスクが減ります。
そして、ディスクブレーキであればリム近辺の素材を薄く加工し重量を軽くできます。ディスクを搭載することでホイール全体の重量は上がりますが、ホイールはハブ周りよりリムを軽くする方が走行性能があがります。
油圧式は軽くて繊細なブレーキコントロールが可能
乗用車にも使われている油圧式ディスクブレーキは、小さな力で大きな制動力を生みます。力が弱い女性でもブレーキレバーを引きやすく、レースやロングライドでの体力消耗を抑えます。また、ワイヤー式に比べて微妙なブレーキコントロールと速度調整が可能となっています。
ディクスブレーキのデメリット
ディスクブレーキのデメリットについてまとめます。
重量が重くなる
ディスクブレーキはパーツが多い分どうしてもキャリパーにくらべてわずかですが重量が大きくなります。また、同じホイールでもディスク専用ホイールはキャリパー専用ホイールより重くなります。これはディスク専用ホイールの方が、制動時に大きな負担がかかるので各パーツの強度を高める必要があるためです。
完成車の価格が高い
ディスクブレーキ搭載のロードバイクは、キャリパーブレーキ搭載のものより価格が高いです。また、ホイールを交換したい場合、ディスク対応のホイールは値段が1~2割ほど高くなります。
メンテナンスが面倒
リムブレーキの場合はブレーキシュー(ゴム)のすり減り具合がすぐに確認でき、パーツ代も安く交換も簡単です。くらべてディスクブレーキは、ブレーキパッドが内蔵式なので消耗具合がわかりにくく、パーツ代も高く交換に手間もかかります。ディスクブレーキ交換の目安は、3,000~5,000kmとなっています。交換時期が来たら定期的にチェックしましょう。
油圧式の場合は、注入してあるオイルが熱や経年劣化で変色し性能が落ちます。メーカーは1年に1回の交換を推奨していますが、最低でも2~3年に1回は交換が必要です。自動車でも2年に1回の車検時にブレーキオイル交換を行うのが基本となっています。
その他のデメリット
2016年頃の国際的自転車レースでプロチームが一気にディスクブレーキを採用したロードバイクに変えましたが、高速で走行中に大規模な集団落車が起こりディスクブレーキで足を切る選手がでるなど危険性が問題となりました。また、長い下り坂でのブレーキングで熱を持ったディスクが歪んでしまったりといったケースもありました。
しかし、ケガや歪みを防ぐためにディスクも新しい技術を使って進化していますし、こういった事故はロードレースでプロが高速で走った場合なので、一般人がロングライドやアマチュアレースで使用しても大きな問題はないかと思います。ディスクブレーキを安心して使ってください。
キャリパー(リム)からディスクブレーキに交換できる?
結論から言えばできません。そもそもフレーム本体の規格がキャリパーとでディスクでは違います。逆にディスクブレーキをキャリパーブレーキにすることもできません!ブレーキタイプを交換したいならば新しい自転車を購入しましょう。
まとめ
大きな流れで言えば販売されるスポーツ自転車はディスク化の方向で進んでいます。ただ、街乗りや軽いサイクリング、通勤通学に使うのにそこまで高性能なブレーキは必要ないので、低価格帯のロードバイク、マウンテンバイクにはキャリパーブレーキが搭載されています。
なので、自分の目的に合わせてブレーキを選べばいいんじゃないでしょうか。性能的には、
ディスクブレーキ(油圧式)> ディスクブレーキ(機械式)> キャリパーブレーキ
となりますが、費用の安さや扱いやすさ重量を考えると逆になります。気軽に乗りたいのであればキャリパーブレーキで十分です。アマチュアレースでシビアな操作性が欲しい人や、雨の日でも安全に走りたいならばディスクブレーキをおすすめします!