自転車雑誌を見ると、「空力性能を追求したフレーム」「空力性能を高めたハンドル」など「空気抵抗削減」を売りにしたアイテムが数多く紹介されています。
しかし、空気抵抗のほとんどが人体によるもの(全空気抵抗の70~80%)なので、機材を交換しても効果はわずかです。そこで今回は、空気抵抗を簡単かつ効率的に削減する方法についてまとめます。
空気抵抗は大きい
自転車の抵抗は大きく分けて3つです。タイヤと路面の摩擦でおこる路面抵抗、ホイールのハブ回転やギヤとチェーンなどの摩擦でおこる機械抵抗、そして体と機材にあたる空気でおこる空気抵抗です。
この3つの抵抗のうち一番大きく厄介なのでが空気抵抗です。例えば時速40kmで走った場合は全抵抗のうち約90%が空気抵抗となります。この速度になると、まるで空気の壁を無理やり突き進んでいるように感じるほどです。また、20kmくらいの遅い速度でも空気抵抗が多くを占めています。
消費パワーを計測して比較
今回の記事は自転車雑誌で行われたパワー計測を参考にしています。計測方法は室内の自転車競技場で乗り方やウェア、ヘルメットを交換して、どのくらいパワー消費が違うのかを比較します。
計測時の速度は数字が安定する時速40kmとなります。実験項目は「ポジション別」「ウェア別」「ヘルメット別」の消費パワー比較です。これらの比較でどのくらい消費パワーが違うのかがわかれば、「効率的な走り」の参考となるでしょう。
ポジションと空気抵抗の関係
ハンドルを握る位置を変えると、フォームも変わりますので空気抵抗も違ってきます。そこで、「ブラケットポジション」「ドロップポジション」「DHポジション」「アップバーポジション」の4つのフォームの空気抵抗を比較してみます。
ブラケットボジション
まずは一般的なサイクルジャージにノーマルヘルメットでブラケットポジションの状態で消費パワーを計測。結果、消費パワーは 353W となりました。この数字を基準にして他のポジションと比較します。
ドロップポジション
次はドロップポジションです。いわゆる「下ハン」ですね。姿勢が低くなる分空気抵抗が削減され消費パワーは 311W となりました。ブラケットポジションに比べて42W(約12%)近く削減されました。ちょっと姿勢が変わっただけなのにこの差は大きいですね。
DHポジション
腕を内側に縮めて、ドロップポジションからさらに姿勢を低くしたDHポジションは消費パワー 266W と段違いの効果がありました。主にタイムトライアルやトライアスロンなどで使われますが、やはり一番効率的ですね。
姿勢の低さはドロップポジションとそこまで変わらないので、腕を中にたたんでいるのが大きな要因のようです。ブラケットポジションとの差は87W(約25%)です。
アップバーポジション
空気抵抗が低くなるヒルクライムなどで休憩するのにも使われるアップバーポジションは以外にも 356W とそこまで消費パワーを必要としませんでした。上体が起きるのでもっと空気抵抗が高いと思ったのですが・・。
おそらく腕の位置がやや内側に入った事で空気抵抗を削減したようです。ブラケットポジションとの差はプラス3W(約1%)です。
結果まとめ
ここまでのポジション別比較を見ると、上体の高さも重要ですが、腕の位置もすごく大事だとわかります。上体はできるだけ低姿勢で、肘を内側に絞るようにする事で空気抵抗を減らせる!って事ですね。自分もこれからは腕の位置もしっかり意識して走ろうと思います。
ウェアで空気抵抗は変わる?
「ポジション別」の次は「ウェア別」です。フォームをブラケットポジションに固定してウェアを5パターンに分けて比較します。画像の右から「サイクルジャージ」「エアロワンピース」「普通のTシャツと短パン」「ウインドブレーカー」「胸元全開サイクルジャージ」です。
サイクルジャージ
まずは皆さんも着ているであろうサイクルジャージを普通に着てみて実験。消費パワーは 347W となりました。ここからは、この数値を基準にします。
エアロワンピース
エアロワンピースはサイクルジャージとほぼ同じ数値になりました。プラス4Wは誤差の範囲でしょう。本来のエアロポジションではなかったのがダメだったのでしょうか・・。
Tシャツと短パン
普通のTシャツと短パンは・・、やはり 380W と空気抵抗は大きいですね。これは体感できるレベルだと思います。バタバタと動いて空気抵抗をモロに受けるのでこんなもんでしょう。
ウインドブレーカー
ウインドブレーカーですが、見た目的には体に密着しているので抵抗は低そうなんですけど、意外にも 371W という結果になりました。密着していても軽い素材で風にはためくのでウインドブレーカーはキツいのだと思います。
前をはだけたサイクルジャージ
最後に前をはだけたサイクルジャージです。イタリアの伊達男みたいですね(笑 時速40kmとなかなかのスピードで走ったため、ジャージは背中に張り付いてほとんど動きませんでした。よって353W と普通のサイクルジャージとほぼ同じ結果に・・。あんまり参考にはなりませんでした。
結果まとめ
この結果を見ると、やはり「サイクルジャージは自転車に乗るのに適しているんだなぁ」といった感想でした。ちょっとしたウェアの違いで抵抗は違ってくるし、それを長時間続けるとさらに大きな違いになるんですね。
それと、よく初心者の方でゆる目のサイクルジャージを着ている人がいますが、サイクルジャージはタイトな感じで着るのがおすすめです。
エアロヘルメットの効果は?
普通のヘルメットと凹凸が少ないエアロヘルメットを比較します。この結果は・・どちらも同じ 347W となってしまいました。ウェアはサイクルジャージで、フォームはブラケットポジションです。
この結果だけ見るとエアロヘルメットって効果ないんじゃない?って事になりますが、下のようにエアロヘルメットにエアロワンピース、DHポジションといった最強の組み合わせでは 257W という最高アベレージを叩きだしました。
おそらくより前傾姿勢になるDHポジションで乗る事により、エアロヘルメットが受ける空気抵抗の比重が増して、その効果を発揮できたんじゃないかと思います。やっぱりエアロヘルメットはタイムトライアルやトライアスロンで身に着けるべきですね。
まとめ
- 全空気抵抗の70~80%が人体による空気抵抗。
- 空気抵抗を抑えるフォームはより前傾姿勢で腕をたたむ事も重要。
- 普通の服よりタイトめのサイクルジャージがおすすめ。
- エアロヘルメットはDHポジションで効果を発揮する。