2017年ツール・ド・フランス(以下ツール)も中盤戦が終わり、最後の休息日に入りました。総合優勝争いはだいぶ絞られてきたものの、まだまだ分からない面白い展開となっています。そこで第10~15ステージの結果をザックリまとめて、個人的な感想を書きます。
【関連記事】
第16~21ステージの結果と感想
第1~9ステージの結果と感想
2017ツール・ド・フランスの注目ポイント
第10~15ステージ結果
それでは各ステージの展開と結果を簡単にまとめていきます。まずは第10ステージからです。
第10ステージ
第10ステージは、178kmと距離が長いわけでもなく、途中に低い4級山岳が2つあるだけのピュアスプリンター向けの平坦コースです。
序盤はフランス人の2名が逃げに乗り、12km地点でメイン集団と3分以上のタイム差を稼ぎました。しかしメイン集団は逃げている2人を余裕たっぷりでコントロールします。そして残り30km地点になると、有力スプリンターを擁するチームがメイン集団を引き始め徐々に先頭との差を詰めます。
メイン集団は残りゴール手前6.8kmで逃げの二人を難なく吸収し、各チーム最後のスプリントへ備えます。最後のスプリントでは激しい争いがありましたが、ゴール手前200mから発射したマルセル・キッテル(クイックステップ)が圧巻の勝利!
キッテルは今大会4勝目を挙げるとともに、ポイント賞争いでも2位のマイケル・マシューズ(チームサンウェブ)に100ポイント差をつける結果となりました。
また、残念なのは、これまでのツールで2度の山岳賞を獲得しているラファウ・マイカ(ボーラ・ハンスグローエ)が、第9ステージの落車の影響でリタイアした事ですね。今回は何も見せ場が無く消化不良となりましたが次回のツールに期待したいです。
第11ステージ
若干上り基調ではありますが、ほぼ平坦なピュアスプリンター向けのコースです。ただ、距離が203.5kmあるので、逃げは人数がある程度いないとキツイ設定ですね。
スタート直後に飛び出したのは、マチェイ・ボドナル(ボーラ・ハンスグローエ)を含む3選手でした。逃げは容認され最大4分30秒のアドバンテージを稼ぎます。
途中の補給地点では、この大会に影響を及ぼす事件が発生。総合を争うファビオ・アル(アスタナ)の貴重なアシスト2名が落車してしまいます。落車したのはダリオ・カタルドとヤコブ・フルサングで、カタルドは残念ながら救急車で搬送され、フルグサングは再スタートしたものの後に左手の骨折と診断されました。
レースは残り28km、逃げ集団からボドナルが単独で抜け出し逃げ切り優勝を獲りに行きます。ここからボドナルは予想以上の奮闘で最後までに逃げ切るかに見えましたが、ゴール手前250mでスプリント勢に惜しくも抜かれてしまいます。
最終スプリントはエドワルド・ボアッソンハーゲン(チームディメンションデータ)が先頭を維持してゴールへ。勝ったと思ったボアッソンハーゲンはガッツポーズの右手まで挙げましたが、一瞬で後ろからかぶせてきたのはまたもやマルセル・キッテルでした。ボアッソンハーゲンは挙げた手でハンドルを叩いて悔しがります。
これでキッテルは今大会5勝目。他のスプリンター達からは、「今年のキッテルにはかなわない」などの弱気なコメントも出始めています。あらためてペーター・サガンとマーク・カヴェンディッシュの離脱が悔やまれますね。
第12ステージ
第12ステージからピレネー山脈2連戦が始まります。低い山から始まりレースが進むにつれて次々と山岳のレベルが上がっていく難コースです。特にゴール手前の最後の坂は壁かと感じるほどの激坂となっており、選手たちを苦しめます。
レースがスタートすると、序盤のスプリントポイントを獲得したい選手と、大逃げを決めたい選手が重なり、逃げアタック合戦がしばらく繰り返されます。その後、スターとから15km地点でやっと12人が逃げに成功。この中にはポイント賞2位のマシューズと1位のキッテルも入っており、序盤のスプリントポイントを獲っています。
そのままレースは進みますが、終盤の超級山岳ポルト・ド・バレス峠では逃げ集団から脱落する選手がポロポロと出始めます。山頂に着くころにはスティーブン・カミングス(チームディメンションデータ)だけとなり、そこからは一人旅となりました。そして、メイン集団もポルト・ド・バレス峠で有力選手を含む25名まで絞られます。
最後の1級山岳の登り口ではナイロ・キンタナ(モビスター)が脱落、しばらくして山岳賞ジャージのワレン・バルギル(チームサンウェブ)も置いていかれます。そしてメイン集団は残り8.6km地点で単独逃げていたカミングスを追い抜き、そのまま頂上を目指します。残り5km地点では、メイン集団は10人にまで減っていました。
いよいよ第12ステージ最大の難関、ゴール手前の激坂では総合2位のファビオ・アル(アスタナ)がアタック、それにロマン・バルデ(AG2R)が続きます。最後はバルデが一歩リードして勝利をつかみました。地元フランス人の勝利に沸き立ちます。
ここで、意外だったのは総合1位をキープしていたクリス・フルーム(チームスカイ)がアルとバルデに付いていけずにタイムを22秒も落としたことですね。これで総合1位は6秒差でアルの手に渡りました。また、フルームの最強のアシストと呼ばれるミケル・ランダが最後の激坂でフルームを置き去りにした行為はちょっとした物議となっています。
第13ステージ
ピレネー山脈2連戦の2日目。1級山岳が3つも重なる難コースです。ただ、距離が101kmとツールにしては珍しい短さなので、ハイペースの激しい展開が予想されました。
スタート直後飛び出したのは、個性が強く大人気のトマ・ヴォクレール(ディレクトエネルジー)と、山岳賞ジャージのバルギルでした。しかしこの逃げは10km地点で吸収。つづいてアタックを仕掛けて抜け出したのは、アレッサンドロ・デマルキ(BMC)を含む3名でした。そして逃げは決まります。
ここで、総合ジャージのファビオ・アルを支えるアシスト、フルグサングが第11ステージの骨折でリタイヤ。アスタナにとってかなり痛手となります。
序盤からレースは激しく動きます。1つ目の1級山岳で逃げ集団からはデマルキが飛び出し単独となり、メイン集団からは山岳賞ジャージのバルギルと、アルベルト・コンタードール(トレック)、ミケル・ランダ(チームスカイ)が抜け出しデマルキを追います。
そのまま1つ目をクリアして勝負は2つ目の1級山岳へ。上り始めの地点でデマルキにコンタドールとランダが合流。しばらくすると、この3名からデマルキが脱落。この時メイン集団からは、キンタナ、ミハウ・クフィアトコフスキー(チームスカイ)、アレクシー・ヴュイエルモーズ (AG2R)、そしてここまで下がっていたバルギルの4名が再度アタックをして抜け出します。しかしヴュイエルモーズのみが途中で脱落。2つ目の山岳山頂は、コンタドールとランダが最初に通過して、30秒後にキンタナのグループ3名が通過します。
最後の3つ目の1級山岳でも激しい争いがあり、キンタナグループからはクフィアトコフスキーが脱落。山頂まで残り2kmの地点では、先頭がコンタドールとランダ、それを37秒遅れてキンタナとバルギルが追い、さらに先頭から2分33秒遅れてメイン集団といった状況でした。
山頂まで残り300メートルでは、先頭2名はキンタナとバルギルにつかまり、山頂はバルギルが先頭で通過。山岳賞ジャージを盤石にする山岳ポイントを獲得します。メイン集団ではフルームがアタックを仕掛けて6名まで絞られますが、総合1位のアルはしっかり食らいつきます。
先頭の4名はそのまま坂を下りゴールに向かいましたが、メイン集団に少しでもタイム差をつけたいコンタドール、キンタナが必死に引く傍ら、総合に関係のないバルギルはトレインの後ろで脚を溜め、最後のスプリントに備えます。結局、脚をしっかり溜めたバルギルが最後のスプリントで抜け出してステージ優勝。第9ステージで惜しくも勝利を逃した雪辱をはらしました。
メイン集団では、最後の下りでアタック合戦が繰り広げられましたが特に抜け出せた選手はおらず、ゴールまで決定的な動きはありませんでした。この結果、コンタドールとキンタナだけが総合で2分近くタイム差を縮め、バルギルがステージ優勝と大量の山岳ポイントを獲得する事になりましたね。
k
第14ステージ
距離181.5kmの登り基調コースです。アップダウンが激しいのでピュアスプリンターには難しく、パンチャー系の選手にとって最大のチャンスとなるコース設定ですね。ゴール手前には激坂があり、さらにパンチャーに有利な条件が整っていました。
まずスタート共にトマ・ヴォクレールを含む5名の逃げが形成されます。メイン集団は、有力パンチャーを含むチームがコントロールし、逃げ集団とのタイム差を3分以内にとどめます。
二つ目の峠のふもとまではそのまま進みましたが、ふもとから山頂までの間に逃げはデヘントとヴォクレールの2人に絞られます。そしてすぐにデヘントが一人で抜け出すとそこから単独での逃げとなります。
デヘントは頑張って逃げたのですが、ゴールまで残り13km地点でメイン集団に吸収。そこからアタックが何度かありますが、全て吸収され集団で最後のスプリントへ。
クラシックレースのような最終局面、残り350mでジルベールがアタックしてリードします。しかし、後方に付けていたバンアーベルマートがゴール手前100mでジルベール抜き、さらに右手から単独でサンピエールの丘を上がってきたマシューズが2人を抜き去ってゴール!勝利しました。
これでマシューズはポイント賞争いへとわずかな望みをつなげる結果となりました。また、意外な事にフルームが最終スプリントに加わっており、出遅れた総合1位のアルから24秒のタイム差を奪っています。これでフルームがアルと入れ替わりで18秒差の総合1位となっています。
第15ステージ
最後の休息日を明日に控えた第15ステージは、1級山岳が2つもある気が抜けないコース設定となっていました。
このステージでも山岳賞ジャージのバルギルが積極的に動き、10名の逃げグループに加わります。最初の1級山岳途中では早くも逃げは5名まで減り、山頂では3名まで絞られ山岳ポイントはバルギルが先頭で獲得します。バルギルは山岳賞へ向けて着々とポイントを重ねていきます。
また、メイン集団からはバウケ・モレマ(トレック)やマイケル・マシューズを含む19人がアタックで抜け出し、先頭の3名を追走します。
スタートから60km地点で19人の追走集団が先頭に追い付き、逃げは28人にまで膨らみます。ここで逃げ集団とメイン集団は6分上のタイム差があり、このステージの優勝は逃げ集団内で争われる雰囲気となっていきます。すぐにトニー・マルティン(カチューシャ)が得意の独走力で逃げ集団から抜け出すと、1分30秒くらいのタイム差を付けて、そのまま終盤の1級山岳へ突入します。
しかし山頂手前3km地点でマルティンは追走集団につかまり、またもやバルギルが山頂を1位通過。山岳ポイントを重ねて下りへと入ります。
一方、メイン集団は最後の1級山岳でフルームにマシントラブル発生。一時は引き離されますが、総合を争うメイン集団はフルームを待つ選択をします。ロードレースは総合上位選手がマシントラブルや、不運な落車の場合、集団に追い付くまで待つという暗黙のルールが発動したんですね。
先頭集団ではゴールまで残り30km地点でモレマが抜け出し独走態勢に、他の選手も必死で追いかけますが、モレマがそのままゴールしてツール初勝利!モレマは今まで総合上位に食い込みますが、これといった結果は出せていなかったので個人的にもちょっと意外でした。メイン集団では特に大きな動きはなくレースを終えています。
今後の予想と注目ポイント
総合優勝、ポイント賞、山岳賞。それぞれ順位がハッキリしてきました。それでは今後の展開予想と注目ポイントをまとめます。
総合優勝
総合争いはクリス・フルームが安定した走りを見せています。それに続くファビオ・アル、ロマン・バルデ、リゴベルト・ウラン、ダニエル・マーティンまでがタイム差1分12秒以内で可能性を残している感じです。
注目ポイントは、第20ステージのTTで、フルームは他の選手より30~1分のタイム差を稼ぎそうなので、第17ステージと第18ステージの超級山岳を含む2連戦で2位以下の選手がフルームを追い越し、さらに1分以上の差を付けられるかどうかですね。
逆にフルームは山岳ステージ2連戦で他の選手に付いていきさえすれば、総合優勝はほぼ確定と言っていいでしょう。ただ気になるのが、2位のアルは頼りのアシストであったフルグサングとカタルドを落車で失った事ですね。そしてフルームも、アシストのミケル・ランダがたびたび不可解な走りをしています。
聞いた話ですが、ミケル・ランダは来期の契約を現チームではなくモビスターとかわしているそうです。あくまで噂ですが・・。そうなるとフルームのアシストより自分の成績を優先させているのはつじつまが合いますね。今後の展開がどうなるのか!?気になるところです。
【総合順位】
- クリストファー・フルーム(チームスカイ)
- ファビオ・アル(アスタナ)+18秒
- ロマン・バルデ(AG2R)+23秒
- リゴベルト・ウラン(キャノンデール)+29秒
- ダニエル・マーティン(クイックステップ)+1分12秒
- ミケル・ランダ(チームスカイ)+1分17秒
- サイモン・イエーツ(オリカ・スコット)+2分02秒
- ルイ・メインティス(UAEエミレーツ)+5分09秒
- アルベルト・コンタドール(トレック)+5分37秒
- ダミアーノ・カルーゾ(BMC)+6分05秒
- ナイロ・キンタナ(モビスター)+6分16秒
ポイント賞
マルセル・キッテルが驚異的な強さを見せてステージ優勝で373ポイントを獲得しています。2位のマイケル・マシューズもコースの途中にあるポイント獲得と1回のステージ優勝で294ポイントと健闘しているのでまだ可能性を残しています。第16ステージか第19ステージでマシューズがステージ優勝し、ポイントを縮められれば面白くなりそうです。
山岳賞
正直ワレン・バルギルで決まりでしょう。調子もいいようですし、1位バルギルの116ポイントに対して2位のプリモシュ・ログリッチェは38ポイントと大きな開きがあります。バルギルは不運な落車だけ注意して無難に走れば間違いないですね。
【関連記事】
第16~21ステージの結果と感想
第1~9ステージの結果と感想
2017ツール・ド・フランスの注目ポイント