24日間、3,609kmにわたって行われたジロ・デ・イタリアも昨日で終了しました。そこで、ステージレースで最も盛り上がる終盤戦の結果と感想をまとめます。終盤戦は山岳ステージ中心なので総合順位が入れ替わる事が多いですよね。今回も最後まで分からない面白い展開になりました。
【おすすめ関連記事】
ジロ・デ・イタリア第1~9ステージ結果
ジロ・デ・イタリア第10~15ステージ結果
2017 UCIワールドチームガイド①
2017 UCIワールドチームガイド②
2017 UCIワールドチームガイド③
第16~21ステージ結果
第16ステージから第21ステージまでのレース結果をザックリ簡単に紹介します。最後の第21ステージは個人TT(タイムトライアル)なので、TTスペシャリストのデュムランからクライマーのキンタナは、16~20ステージで2分以上のアドバンテージを取っておきたい所です。
ここまで1位デュムランと2位キンタナは2分41秒です。キンタナが優勝するには、16~20ステージまでの山岳ステージで、デュムランとのタイム差を約5分稼ぐ必要がありますね。
第16ステージ
このステージから第20ステージまで、本格的な山岳コースとなり選手を苦しめます。第16ステージは、距離222kmで今年のチマコッピ(最高峰)である標高2488メートルのステルビオ峠をはじめ、1級山岳2か所、超級山岳1か所を含む難コースでした。
序盤から激しいアタックと吸収が繰り返され、なかなか逃げが決まりません。スタートから48km地点でやっと3選手がアタックを決めた後、すぐに22人が追走して合流。逃げ集団は25人となりました。
この日最初の峠、モルティローロは逃げ集団がトップ通過、メイン集団は2分遅れて山頂を通過します。そして2つの目の峠であり最難関のステルビオ峠では、逃げ集団が8選手まで絞られます。メイン集団も数を減らしながら追走します。
最後の峠、サンタ・マリアの上り始め、ゴールまで残り34km地点で今大会最大のアクシンデント発生!総合1位のトム・デュムランがトイレでストップ・・。ジャージを脱ぎ捨てて草むらに行ってしまい、メイン集団に大きく置いていかれました。峠の山頂は雪が残っている程寒いので、お腹を壊したんですかね・・。個人的には人間らしくてトム・デュムランが好きになりました(笑
その後、アシストが残っていなかったデュムランは1人でメイン手段を追走。個人TTスペシャリストでも苦しい展開です。もちろんメイン集団は全力でデュムランとの差を引き離しにかかります。
ゴールまで24km地点で、キンタナ、ニバリ、ポッツォビーボ、ザカリンの総合上位勢が残ってステージ優勝を争い、最後にニバリが抜け出し、一人で逃げ続けたランダをかわしてステージ優勝!今大会初のイタリア人優勝で盛り上がりました。その後、デュムランがトップのニバリに2分18秒遅れてゴール。総合争いで2位キンタナに31秒まで差を詰められます。
第17ステージ
中級山岳が連なる219kmのこのステージ、ゴールは緩くて長い登りの山頂でした。スタートからすぐにピエール・ローランとマテイ・モホリッチを含む3選手がアタックして逃げに乗り、4km地点で3分以上のタイム差を付けました。
38km地点の2つ目の峠で40人ほどの選手がメイン集団から抜け出し、逃げの3人を追走。逃げ集団と追走集団で追いつき追い越されの激しい展開が繰り返され、ゴールまで残り45kmで逃げ集団は25人となりました。そして、メイン集団は先頭から最大14分近くの差をつけられ、ステージ優勝はおのずと逃げの25人だけの争いとなります。
最後はゴールまで残り7.8kmで抜け出すことに成功したローランが、そのまま逃げ切ってステージ優勝。今までのステージで、何度も何度も頑張って逃げるけど結果がでなかったローラン。ついにジロのステージ初勝利です!総合順位には動きはありませんでした。
第18ステージ
137kmと距離は短いですが、1級、2級、2級、3級、1級と5つの峠を越えてゴールは山頂となる、クライマーのキンタナにとっては勝負となるステージでした。まずは5km地点で4選手が逃げに乗りましたが、1つ目の峠でティージェイ・ヴァンガードレンとミケル・ランダを含む15選手が追走して合流し、19選手の逃げグループが形成されます。
レースはそのまま進み、3つ目の峠でメイン集団からキンタナとニバリが抜け出すなど動きを見せますが、デュムランも必死にアタックをつぶします。そして逃げ集団ではレースが進むにつれて人数が減っていき、ゴールまで残り40kmあたりでは7選手に絞られます。
その後逃げはゴールまで残り15kmでヴァンガードレンとランダが抜け出し最後のスプリントでヴァンガードレンが1着でゴール!BMCに今大会初のステージ優勝をもたらしました。
メイン集団では、ゴールまで残り6.5kmでキンタナがアタック。しかし最初の勢いは良かったのですが徐々に失速し、残り5kmでメイン集団につかまります。その後、総合上位陣が次々とアタックしましたが全て失敗に終わり、結局集団でゴール。総合の順位とタイム差は変わりませんでした。このステージでタイムを稼ぎたかったキンタナには痛い結果です。
第19ステージ
3級、2級、1級の山岳を超える191kmのコースです。ゴールとなるピアンカバッロ山頂は全長15.45kmの厳しい上り坂で、最大14%の勾配が超難所です。キンタナにとってこれが1位のデュムランからタイムを稼ぐ最大のチャンスでした。
この難しいステージで逃げに乗り、独走で勝ちを拾ったのは山岳賞ジャージを着たミケル・ランダでした。ここまでのステージで何度も逃げに乗り惜しくも2位が続いていたのですが、やっとステージ優勝できましたね。ちょっと感動。
総合争いではピアンカバッロで総合1位のデュムランが遅れ、2位のキンタナが総合で逆転!しかし思ったよりタイム差が開かず、1位キンタナと2位デュムランのタイム差はたった38秒で次に進む事になります。キンタナにとっては苦しい展開ですね。
第20ステージ
最後の山岳ステージとなるのは、前半はほぼ平坦で後半に1級の峠が2つ重なる190kmのコースでした。ただ、山頂ゴールではなくて下りの後にゴールだったので、クライマーのキンタナが逃げ切るにはちょっと不利なコース設定でした。
まずは6選手の逃げが形成されて、序盤の平坦路でのレースは落ち着いて進みます。そして1つ目の峠を越え、最後の峠に入ると総合争いが今大会最高の激戦となります。総合上位のキンタナ、ニバリ、ピノー、ポッツォビーボ、ザカリンが協調してアタックを仕掛けてデュムランを引き離しにかかります。そのままリードを広げて、最後は5人でのスプリント勝負となり勝ったのはピノーでした。
総合上位の5人から遅れたデュムランでしたが、粘って先頭からたった15秒遅れでゴール。これで1位のキンタナとは53秒遅れの4位まで落ちましたが、デュムランにとっては余裕の射程内でしょう。
第21ステージ
最後のステージは29.3kmの下り基調のコースで個人TT(タイムトライアル)でした。このステージまでにデュムランから2分以上のタイム差を奪いたかったキンタナは、53秒しかアドバンテージをつくれずかなり不利でした。そしてTTスペシャリストのデュムランは圧倒的な速さでこのステージ2位でフィニッシュ!ステージ優勝はロットNL・ユンボのヨス・ファンエムデンでした。
キンタナはデュムランから1分39秒遅れの27位でした。結果、デュムランこのステージで大逆転して総合優勝を勝ち獲りました!オランダ人がジロで総合優勝したのは史上初の快挙だそうです。
最終結果
最終結果とタイム差はこのようになりました。
第100回ジロ・デ・イタリア 個人総合最終成績
- トム・ドゥムラン(サンウェブ/オランダ)90時間34分54秒
- ナイロ・キンタナ(モビスター/コロンビア)+31秒
- ビンチェンツォ・ニバリ(バーレーン・メリダ/イタリア)+40秒
- ティボ・ピノー(エフデジ/フランス)+1分17秒
- イルヌール・ザカリン(カチューシャ・アルペシン/ロシア)+1分56秒
- ドメニコ・ポッツォビーボ(アージェードゥゼール/イタリア)+3分11秒
- バウケ・モレマ(トレック/オランダ)+3分41秒
- ボブ・ユンゲルス(クイックステップ/ルクセンブルク)+7分04秒
- アダム・イェーツ(オリカ・スコット/オーストラリア)+8分10秒
- ダヴィデ・フォルモロ(キャノンデール・ドラパック/イタリア)+15分17秒
各賞
- ポイント賞(マリア・チクラミーノ):フェルナンド・ガビリア(クイックステップ/コロンビア)
- 山岳賞(マリア・アッズーラ):ミケル・ランダ(チームスカイ/スペイン)
- 新人賞(マリア・ビアンカ):ボブ・ユンゲルス(クイックステップ/ルクセンブルク)
感想
総合争いではデュムランの山岳での粘りが光りましたね。総合上位選手にアタックで離されても離されても慌てずにマイペースでついていくという、クリス・フルームみたいな走りで強さを感じました。対照的に生粋のクライマーであるナイロ・キンタナにはもう少しガンガン行ってほしかったですね。もしかしたら7月のツール・ド・フランスを見据えて無理はしなかったのかも?と思っちゃいます。
その他、昨年王者のニバリも年齢を重ねたもののさすがの走りで3位。後半はもしかしたら優勝行ける?って所まで攻めました。後は4位~6位のピノー、ザカリン、ポッツォビーボも必死で攻めてましたし、今後の可能性を感じました。これからも応援します。
総合以外ではポイント賞のガビリアには驚きです。22歳でグランツールで4勝と圧倒的なスプリント力を見せつけました。ツール・ド・フランスでサガン、カベンディッシュ、キッテル、グライペルといった最強スプリンター達と闘ってほしいですね。
後は山岳賞のミケル・ランダは何回も逃げに乗ってステージ2位と優勝を勝ち取りました。チーム・スカイには、このクラスの選手が何人かいてツールではクリス・フルームのアシストするんですから豪華な話です。新人賞のユンゲルスは総合でも8位と大健闘しました。名前を憶えて今後の活躍を追っていきます。
【おすすめ関連記事】
ジロ・デ・イタリア第1~9ステージ結果
ジロ・デ・イタリア第10~15ステージ結果
2017 UCIワールドチームガイド①
2017 UCIワールドチームガイド②
2017 UCIワールドチームガイド③